本書は2003年6月20日に岩波新書として刊行された。
筆者が44人もいる本はわたしは初対面であった。
いわば、奈良文化財研究所が総力を挙げて取り組んだ本なのである。
その熱気がわたしを包み込んだ。
考古学、建築史学、古代史学、保存科学、造園学など多種多様な専門分野が見事に融け合って、結合しているのだ。
驚くべき熱意が伝わってくる。
細くて深い知識がより深く広く奈良を解き明かす。
新しい視点を提供する年輪年代法、新しい史料の読み方が東大寺、法隆寺、薬師寺を甦らせる。
新鮮なのである。
新しい東大寺、法隆寺、薬師寺がわたしの前に現出し、誘うのである。とても魅惑的な世界がわたしを奈良に近づける。
そこに、西大寺である。
奈良の手前の近鉄奈良線のこの駅をわたしは数百回も通っているが、通り過ぎる駅だったのである。
東大寺に対して西大寺などと考えたことは一度もない。
この本を読んでいて東大寺の歴史に対する理解が深まっていたのだろう、西大寺は東大寺に対する存在なのだと閃いた。
何と、聖武天皇、光明皇后に対して皇位を継承した女帝が両親に対抗するために発願したのが西大寺であったのだ。
わたしは6年前に薬師寺から西大寺に下り、平城京あとまで歩いた。
この時も、西大寺を歩こうなどと思わず、無視した。
この本を読む気になったのは、高校の同期生との奈良散策である。
ますます、行きたくなった、おいでやす、平城へ。
あぁ、奈良県庁に行って庭園跡を見たい、東大寺の校倉も見たい、そして西大寺の東大寺に匹敵する様を見たい。
奈良、憧れの古の京、思い出のつまっている奈良へ行きたい。