本書は2013年11月17日双葉文庫として刊行された。

 作者は『銀二貫』や『みをつくし料理帖』などで躍進中の作家である。

 なぜか地味なテレビ時代小説とみなされたのか上記二作は最近テレビ化された。

 二作とも端折ってつくられたようなので作者の思いが作中に出るまでには至っていない。

 本書はその時代小説の作者が読み手に元気を与えるために書き下ろした短編小説を集めたものである。

 9話から構成されている。いずれも共通テーマは人間愛である。

 お弁当ふたつ

 車窓家族

 ムシヤシナイ

 ふるさと銀河線

 返信

 雨を聴く午後

 あなたへの伝言

 晩夏光

 幸福が遠すぎたら

 上記4作目まではとてもよく書けている。

 お弁当ふたつは離職させられた夫とそれを偶然知った妻が車中でお弁当を食べる話である。

 車窓家族は大阪の文化住宅の前で停車する電車の中の人間とその住宅に住む老夫婦とのつながり、そこにはカレーライスが介在する。

 ムシヤシナイは、老人と孫がつながり、孫が再生に向けて歩み出す物語である。

 ふるさと銀河線は中三女子が自らの才能を伸ばそうとする話で、背景には兄とのつながりがある。

 誰の人生も交わるのは難しい。

 夫婦、兄弟姉妹、親子ですら交わることは生半可にはできない。

 作者は他人を交えながらなんとかその愛を実現させようとする。

 この作者は人間を、愛を言葉の力でもって表現しつくそうとしている。今後とも読み続けなければならないと思っている。