本書は2014年3月13日にマガジンハウスから刊行された。
筆者は雑誌・書籍の編集者を経て、手紙の在り方に関心を持ち、それを主題に執筆活動を続けている。
わたしは、明治の時代とはすごいと思ったのは『吾輩は猫である』(大倉書店)の装幀を見たときである。漱石は装丁に強い関心を持ち見事な本に仕立て上げていた。
この本の表紙にも、筆者の意図をそのまま表す工夫をしていた。
表表紙には、
「皆様ごぞんじの例の猫が病気になり、療養しておりましたが回復せず、昨夜いつの間にか裏の物置のかまどの上で逝去いたしました」
「障子を一枚開け放ってみなさい。春風は思うままに吹くだろう」
「牛のほかには何も食べるものなし」
などの言葉を目立つように配置。
裏表紙にまでも、
「自分のことは棚へ上げて未来の君のために一言するのです」
「霧を角切りにして缶詰にして日本に持ち帰りたい」
「絵は百円から一輪も引けぬとのお言葉、尊敬しながら承知しました」
などの言葉を配置している。
これを眺めているだけで、漱石の人間性をうかがうことができる。
さぞ、筆者は装丁者と話し合ったのではないか。
わたしなどは断ることの手紙での例示を学びたかったのだが、漱石の断り方には、丁寧さ、行き届いた配慮などが人間性の表れをベースにしており、決してまねができないと考えざるを得なかった。
それにしても、漱石から学べとこのような本が出ることは悪いことではない。