母の通夜は雪が降り積もった。
先だっての雪は融けずに、午後になると風を冷たくする。
わたしは雪は嫌いではないが、滑ることには気を使う。
雪かきをしない団地通りはあちらこちらに凍っている様が見て取れた。
わたしの革靴は4足あるのだが、どれも滑っている記憶しかない。
革靴で出かけるべきなのだが、雪女の母が怖くなって、父親のゴム長靴に頼ることにした。母親の通夜には雪が降った。しかも積もったのである。わたしは本日の礼服に身を包み。長靴をはいて通夜に臨んだ。
ところが、礼服のズボンのすそをゴム長靴の上にして駅まで歩いたが、弁慶の泣き所が痛い。
駅についてズボンのすそを長靴の中に入れた。
完全に長靴スタイルである。
もともとスタイリストではないわたしは気にならなかった。
よほど雪の深いところから出てきたのではないかと思ってくれたのだろうか、気にする人はいなかった。
そして、今回の雪である。母親が雪を呼び寄せていると考えざるを得なかった。
姉の家の上棟式は今週の土曜日である。なにか、台風を呼んだり、雪を呼んだりしているに違いないと思った。
わたしは坊さんの読経に和すように「母ちゃん、頼むよ。もう雪など降らせないでおくれよ」
とお願いした。
いま、天気予報を見ている。雪は降らない。
ああ、やはり、追善供養はしておくものである。