買い物を終え、団地の路を歩いていた。

 わたしは、いつまで黄葉が枝を離れずに頑張っているのかと、上を見つめながら取り留めもなく考えていた。

 わたしの後ろから叫び声が上がった。

 「ねっ、人が倒れていますよね。ねっ、ねっ」

 わたしにかけた声だと思ったので、前方を見つめると、30メートル先の芝生に倒れている人に気がついた。

 あわてて、その倒れている人に走り寄った。

 仰向けになっていたのは老婦人であった。

 「どうしましたか。大丈夫ですか」

 声をかけると、その老婦人は。首を縦に振った。

 そこへ。老婦人を知る、初老の婦人が、

 「○さん、郵便局に行ったんだよね。この人は突然倒れることがあって、つい最近もゴミを出した後倒れて近所に人に助けてもらったのよ」

 「じゃ、帰るところだったんですね。自宅は近いのですか」

 「この棟よ」

 これぐらいならば、背負って行けると、体力に自信のないわたしは思った。

 「おばあちゃん、わたしが背負うから」

 と言うと、老婦人はともかく立たせてほしいと言う。

 立たせると、わたしの腕をつかんで

 「歩く」

 50メートルほどを5回の休憩を入れながら歩ききった。

 その間、わたしに

 「ありがとうございました」

 「ご迷惑をおかけしました」

 と、何度言ったことか。

 「私は○さんの上の階の人間なんだけど。○さんは人の支援を拒んでね。私は主人と息子が一緒だからまだ暮らしていけるんだけど。○さんはね」

 老婦人は95歳で一人暮らしである。

 多分老婦人は誰にも迷惑をかけず、生きてきたのであろう。

 わたしも今の時点では、誰にも迷惑をかけず生きてきた。

 しかし、加齢は人間の能力を容赦なく奪い去る。

 これに対応できるのは人間の力を借りることであろう。