本書は1985年8月24日に旺文社文庫から発行された。

 落語家の6代目名人三遊亭圓生さんの名随筆である。

 本は黄ばんでいたが、文章は落語の噺のような語り口でたいへん楽しく読ませてくれた。

 わたしは落語は好きだが、浅草演芸ホールに1年に1度行くぐらいの人間である。

 圓生さんの顔には見覚えがあるが、落語の印象は何も残っていない。

 しかし、圓生さんは頭の中に随一の話が詰まっていたといわれる落語界の巨人である。

 本書の高座は四つから成る。

  人情浮世床

  寄席のこしかた

  風狂の芸人たち

  本物の味

 人情浮世床と寄席のこしかたで落語界全体の風潮を語り、ご自分の生きてきたこと、やってきたことを総括し、何気なく落語界の若手に活を入れている。

 お金と人気にすぐ気が行ってしまう若手のために、風狂の芸人たちの中で気になっていた落語家、講談家などを淡々と紹介する。

 そして最後に本物の味と称して、本物の味を無くしてしまっている社会を風刺しながら、そば、フグ、クサヤの話に誘う。

 読ませる内容は聞かせる噺の名人になっていた方の得意とするところなのだろう。

 なぜ、この本を読んだかと言えば、わたしは活字からでないと門を入れないのである。

 圓生がけなし、褒めていた古今亭志ん生ともども、圓生の落語を鑑賞することにした。