浄瑠璃長屋春秋記シリーズは『照り柿』『潮騒』『紅梅』と書かれ、この4冊目が最終巻となる。
本書は2010年11月15日に徳間文庫として刊行された。
藤原さんは剣が使えて、人がいい浪人を描く名手である。
本書の主人公も妻に出奔され、その妻を探すために浪人になり妻の行方が江戸とわかり、浄瑠璃長屋に落ち着き、大都市江戸で妻を探すわけである。
家督を弟に譲って妻を探すわけだが、嫁姑との関係悪化が自分のもとを去った理由の一面であると思っているので、妻にすまないという気持ちが主人公の妻探しに熱が入る。
ところが、浪人となっては日々の暮らしが立ち行かない。
そこで、日銭を稼ぐために口入屋を利用する。
浪人仲間と親友になったり、同心や岡っ引きと知り合いになったり、商家に勤める女性からは慕われるはで、この主人公が悩みに向き合うことはない。
こうして、ある事件をきっかけに、妻との再会を果たし、それからの浄瑠璃長屋が楽しみになるのだろうが、夫婦の間にあるものではドラマにならない。ここから先は純文学なのであろう。