昨晩熱帯夜の中、標記2冊を読み切った。

 汗と涙が連続し、本書は紹介しないといけないと思ってしまった。

 祥伝社文庫から両書は刊行されている。『千の倉より』は平成23年7月25日に、『茶漬け一膳』は平成23年12月20日発行である。

 取次屋は武士、町人のトラブルを知恵と行動力、武芸を駆使して武士、町人が解決する物語である。

 千の倉には、

 浮世絵の女

 宝のありか

 千の倉より

 お咲と三人の盗賊

 の四話が収録されている。


 茶漬け一膳には、

 茶漬け一膳

 敵役

 面影の路

 帰って来た男

 の四話が収録されている。


 合計八話を読んだのだが、八話とも物語後半には涙が止まらなくなり岡本さんの力量に参ってしまった。

 茶漬け一膳は、女房に逃げられた大工の男の復縁の物語である。

 人生50代の江戸時代では40代の男は晩年である。大工の男は40台を超え、自らの人生を反省することしきりなのであるが、偶然に自分の息子に1両だまし取られてしまう。水茶屋を営む女房、不良生活を続ける息子を見た男は取次屋栄三に息子の更生を願う。取次屋は息子を捕え、だまし取った男への謝罪と月2度50文返済を約束させる。息子は父親とは知らない男の自宅を月2度きちんと返済のため訪れる。

 1年たったころ、息子は母親に職人になりたいと漏らす。母親は大工の男が息子を奪うために卑怯な手を使っていると思ってしまう。

 茶漬け一膳は、男が息子にいう言葉である。

 「ああ、いつか女房をもらった時も、茶漬け一膳を忘れるな。たとえ腹は膨れていても、あれこれ話ができるだろう」

 夫婦の絶妙な間の重要性を教えてくれている。

 千の倉よりは、両親に死に別れた兄妹の物語である。丁稚奉公に出ていた兄であるが、兄を育てていた主が死ぬとその主の不良息子は兄をくびにしてしまう。しかし、兄は知恵と愛嬌と度胸と長屋の人情とで生きる。金を稼ぎ、その金を奪い取ろうとする悪がきとは戦う。不良息子にくびを切られた老人の世話までする。

 取次屋は奉行所与力から養子の斡旋を依頼されていたのである。

 

 人情が濃厚な作品である。今日もこれから本を借りに行こう。