本書は2002年2月25日に中公文庫から刊行された。

 発効後、すぐに買ったのではないか。

 いままでずっと本棚に入ったままであった。

 ここ数か月は、海外旅行への欲求が急速に萎えていた。

 これではまずいと思い、本棚をのぞいたら本書が目に入った。

 わたしはスペインには2度行き、プラド美術館にも2度行っている。

 この本を読めば、萎えた気持が奮い立つかと思い、読んだ。

 筆者は1956年から3年間、スペイン政府給費留学生としてマドリッド大学でスペイン美術史を学んだ。

 その多くをプラドで学んだ方である。

 冒頭筆者は「夢にまで見たプラド美術館を登りながら、逸る心の片隅で「これでよかったんだ」と言いきかせるもう一人の自分がいた。」と述べている。筆者の夢がスペインでかなうなどと思っていなかったのだろう。

 本書では国立プラド美術館に収蔵されている3人の美の天才、エル・グレーコ、ベレスケス、ゴヤの作品を取り上げて解説する。

 3人が生きた歴史、政治、社会的背景をじっくり考え併せて作品の持つ意味を解説していく。

 17世紀から19世紀はカトリック国スペインでは異端審問が頻繁に行われ、美術の分野で女性の裸体画として残されているのは、ベラスケスの『鏡を見るヴィーナス』とゴヤの『裸のマハ』 だけだと言う。イタリア、オランダ、フランスの美術と違うスペインの特性を筆者はそこに見て、スペインカトリックの特別な世界に王家、大貴族の存在羽治外法権だったと筆者は推論する。

 ベラスケスとゴヤは首席宮廷画家であり、有力な保護者がおり、裸体画制作を可能にし、その絵が現在まで残ったと言っている。

 プラド美術館には当初王家が保存していた美術を委譲され、いまに至っている。

 それにしても、プラド美術館は広大であり、素晴らしい美術作品が山のように展示されている。

本書には上記の3人のほかに、バルセロナに作品の多くあるガウディ、ピカソ、ミロに言及している。

 スペインの天才の話であるが、その天才が歴史上価値があると筆者は言っているようである。

 筆者はプラドで夢と出会い、夢の実現をその後の人生で果たしてきた。そのような人の著作を読んで、すぐにスペインに行く気にはならないが、少なくとも腰は上がった。