『カーライル博物館』は明治33年10月から明治35年12月にかけて英国に留学した漱石が、『吾輩は猫である』執筆と並行して、当時の思い出を書き記した随筆である。
本書はワイド版岩波文庫281『倫敦塔・幻影の盾』に収載されている。
トーマス・カーライルはイギリスの評論家、歴史家である。1795年に生まれ1881年に亡くなった。『衣装哲学』『英雄崇拝論』などで物質主義を批判し、英雄を賛美した。
漱石は倫敦塔には1度しか行っていないが、このカーライル博物館には4度行っている。
カーライル博物館はチェルシーにある4階建ての真四角のビルである。
カーライルは思索家であり、静寂を好むが、思索を妨げる生活音には悩まされたようで、大金を投じて4階を増設して、そこを書斎にしたようである。
漱石はカーライル博物館の案内女性を面白おかしく描写し、1階から4階までの見学のさまをカーライルの考え方や知識を交えて克明に書いている。
この案内女性はそのとき女性が住んでいた厨まで漱石を案内し、詩人テニソンがカーライルを訪問した時2時間余り一言も発せず厨で向かい合っていたと説明してくれた。
漱石はカーライルの雰囲気を階を上がるごとに感じ、1階に戻った途端にカーライルが遠ざかった書いている。
博物館、美術館の見学の仕方を学ぶよい本である。