なのに、外出とは己の不運を呪った午前であった。
ところが、用事を終え、午後5時前の電車に乗り、帰ろうと考えたらそのとおり体が動いてしまった。
東京駅で特別快速に乗った。
読みかけの風野真知雄『妖談ひときり傘』を読んでいた。
そこへ、30代の男女が駆け込んできた。
「座れなくて、残念」
と女性が言った。かなり遠くまで行くのであろう。
あんたら、ここに立つのは残念の後の無念になるよと説明したかったがこの二人の立つ場所の勘違いにあきれた。
わたしは、座席の中央に席を占めていた。短い距離しか乗らない人はドアの近くに座る。この原則すら理解していない、この二人の見通しの悪さを、わたしは思った。
この二人のうちの女性はけれんみのない性格らしく、また二人の間では共有するほどの付き合いはなかったらしく、女性は男性に話しかける。
「お子さんは、何人いらっしゃるのですか」「わたしは北区ですが、どちらにお住まいですか」とか、聴きまくる。
そのうち。「わたしは3人姉妹です。3人とも今年になってついに全員バツイチ、わたしは長女だけど、次女は罰2。だけど彼氏がいるのは次女だけ。次女も三女も子供は二人。子供がいるのに次女はようやる」
うれしいくらいあっけらかんとわたしの隣に座った女性は話し続けたが降りてしまった。
ああ、こんな女性がわたしは好きなんだと思ったが、顔を見ることなしに、出会いは終わってしまった。