本書はワイド版岩波文庫から2009年2月17日に発行された。

 シルバーにワイドは最適である。本文の文字が大きいので読みやすさが際立つ。また、明治の文学作品では漢字にルビが降られることが多いいが、そのルビも識別可能である。


 本書は、健三、お住夫婦の擦れ違いを軸に、健三の元養父、島田との絡みを従にして進行する。

 健三夫婦には女の子が二人いるが、健三は自宅で仕事をしているため、子どもをしかるがかわいがらない。

 お住は、健三から、

 「お前は馬鹿だ」

 「もっと本でも読んで勉強しろ」

 と、軽蔑されていると感じている。

 健三はお住はまるで自分のことを理解しようとしていないと感じている。

 健三は真面目に働き、自分のために時間を使っている。これをお住は仕方がない人間と思っている。

 自分本位の生き方をする男と自分が考える男の生き方とは違う男が健三であると考えるお住。どこまでいってもかみ合わないみたいだが、島田の出現、3人目の子供の出生、健三の兄、姉の亭主、比田などの存在が健三とお住を変えていく。

 

 本書は漱石の自伝告白小説であろう。

 以前はまるで気にならなかった、漱石の核心、女性蔑視が鼻につくが、女性は負けてはいない。

 この面白さは100年後も漱石を日本人の心の中で生き続けていくのではないかと思う。

 それにしても漱石は『明暗』を完結させたかったとわたしは思う今である。