本書は2001年1月1日に小学館文庫から発行された。
8年前に読んだのだが、また読み返したくなった。
網野史学は、民衆に視点が置かれ、新しい解釈を次々に発表してきた。
網野さんは『無縁・公界・楽』『日本中世の非農業民と天皇』『日本の歴史をよみなおす』など力作を刊行し、世間に新しい歴史を提示し続けてくれた。
平氏が台頭するまでは、日本は天皇が政治を行っていた。
天皇に税や通行料を免除されていたのが、一芸に秀でていた「道々の人」、つまり遍歴民、漂白民であった。古代中世は天皇に直接仕える公御人、神人、寄人がおり、道々の人はそれら身分になり、保護され、自由に日本全国を移動し、自分の職能を使い生きていたのである。なんと生き生きしていた社会。わくわくする。
また、近世になると士農工商の身分制度が確立するのであるが、農業民とされた人々は、百姓と呼ばれていたが、この百姓は本当に農業をする人々のことだけを指し示す名称なのか、網野さんは検証し、異論を提示した。
本書も豊富な古文書を読み解いた末の成果である。底辺にあるのは、荘園、江戸時代の古文書から確信を抱くに至った網野さんの信念である。
北条時頼から得宗北条執権政治確立までを、蒙古襲来と絡めて見事に解き明かしてくれている。
朝廷との関係、西国への支配などが蒙古襲来によって劇的に変化し、武士の統治が全国に波及したという。日本に外国が武力で侵入してきたのは、この蒙古襲来と第二次世界大戦で敗北したGHQのみである。この二つの歴史は日本を劇的に変えた。
蒙古襲来は、得宗執権政治を確立し、天皇から武家政権への移行を確実にさせた。
この変更は、いままでの社会体制を変えていったのである。
道々の人たちは天皇との関係を否定され、あげく、いまある身分差別を助長する方向に行ってしまったし、百姓は農業民にされ、水飲み百姓は零細農民にされてしまった。
蒙古襲来は中世から近世にいたる重要な事件だったと網野さんは言っているのである。
網野さんの歴史観は庶民がいかに自由に境目のない行動で、社会を活性化してきたか言うことである。
わたしはもっと早く網野さんに出会いたかった。しみじみと思う。