集英社文庫から1996年2月25日に発行された。

 わたしは超おもしろい推理小説作家だと思っていた。

 躁鬱探偵が活躍する『H殺人事件』『CM殺人事件』『M殺人事件』シリーズと『やっとかめ探偵団』シリーズを1986年から2年間読みふけった。そして1987年に出版された『国語入試問題必勝法』で読むのを止めた。

 『普及版 日本文學全集第1集』は、書名にそそられて手に取った。

 目次を見たら、古事記、源氏物語、方丈記、平家物語、小倉百人一首、徒然草、太平記、好色一代男、奥の細道が取り上げられていたので、何かの参考になる木がした。


 さすが、ユーモアと洒脱性を有している作家の筆である。

 おもしろい。筆者は縦横に虚構性をこの文学作品に投影させている。古典の名著を、たとえば、古事記では解説したと思えば、源氏物語では源氏物語こそ最高の文学作品と思っている女性国語教師を登場させ、六条御息所を解説させる。もちろん、妻のいる数学の男教師との関係をスパイスにして物語を盛り上げる。

 方丈記は、妻に捨てられ、娘とも連絡を取れなくなって、60歳を目前にして会社を辞めた男が主人公になっている。男は夢破れ、いまはカプセルホテルを終の棲家にしている。毎日することがノートにそこはかに思うことを書きつけること。まさに現代の鴨長明を描いている。

 参考になったのは徒然草である。

 吉田兼好の人物像を徒然草から想像して、結論として、年配の男性がなぜ、辛口のエッセイを書くのか論証する。ただ、兼好は当時の知識、知性ではトップレベルだったので嫌みのないエッセイになった。これを真似する男は自作のエッセイで失敗すると断言する。

 ちなみに、女性のエッセイは枕草子が原点になっていると提示している。

 参考になった。