2年前だと思うが、「新しい時代小説の作家」のふれこみで上田さんが紹介されていた。

 時代小説は藤沢周平さんにはじまり、池波正太郎さんを経て、最近は佐伯泰英・鈴木英治・藤原緋沙子さんと読んできた。

 藤沢さんの海坂藩に関係づけた『用心棒日月抄』、池波さんの『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』などが読みごたえがあった。藤沢さんの『三屋清左衛門残日録』は一冊で終わったが、わたしにはこたえられない、すでにない武士の最後の姿を見事に描ききった作品だと思っている。

 佐伯さんの『密命』『鎌倉河岸捕物控』『居眠り磐音江戸双紙』、鈴木さんの『手習重兵衛』『徒目付久岡勘兵衛』『父子十手捕物日記』、藤原さんの『見届け人秋月伊織事件帖』『渡り用人片桐弦一郎控』『藍染袴御匙帖』などシリーズとして多くの人に読まれている。

 主人公は強く、優しい。浪人であったり、同心であったりが多いいが、町人とのいい人間関係を維持しながら生きている。

 つまり、上田さんが新しい時代小説と言われたのは、江戸幕府の文官を主人公に持ってきたことである。

 『奥右筆秘帖』シリーズである。家督相続の届け出などは奥右筆を通らないと加盟断絶になる。また、奥右筆が管理している文書は幕府創設以来の秘密文書がつらなっている。その職務を精密に描写し、生き残りを図る主人公を描いているのである。

 券が使えない主人公には剣をよくする人間が配置されるのだが、券を使う場面がふんだんに用意され、一気に読了まで誘ってくれる。

 その上田さんが、宝蔵院一刀流の達人を主人公にしたシリーズが『三田村元八郎』シリーズである。本作はシリーズ2弾目。幕府と朝廷をつなぐ役割をもった主人公が縦横無尽に活躍する。

 しかし、上田さんは徳川幕府、藩の行政官となった武士の実情を描いて行ってもらいたいと思う。