本書は岩波書店から2013年1月9日に発行された。

 丸山健二さんの名前を知ったのは、40年前である。

 大阪文学校に通っていたころ知り合った男性が、

 「アンクルさん、この『夏の流れ』は丸山の初版本なんだけど、すぐに高値はつかないけれど、20年後にはすごいよ」

 とわたしに告げた。

 わたしは、文学者の初版本集めには関心がなかったので、話は聞き流したが、丸山さんの名前は心に残った。

 1年に1作品を出すことを自らに課しているらしい丸山さんには関心があり、図書館に行ったときは新刊コーナーに丸山さんの名前があるかどうかは習慣になってしまった。


 作者には申し訳ないのだが、本書も図書館で借りてきた。


 本書は、児童養護施設育ちで、大学は出たけれども、親しい友人もつくれず、結婚にも失敗し、シラコバトとの生活に束の間の安らぎを感じていた42歳の中年男が、シラコバトの死と直面し、シラコバトの埋葬場所と自分の死に場所を探す、その情景を42歳の中年男の独白で全編339ページを書き連ねている。

 作者は長編小説を得意としているが、わたしは残念だが、この作者の意思に付き合う粘りがない、

 しかし、本書は読めた。

 どちらかと言うと、死にたいならさっさと死ねば、しかしそうなると物語は終わってしまう。

 飽きが来ると、物語はきちんと転換する。

 シラコバトの死、小舟で川を下り始めると遺骨に巡り合う、離婚した妻が自死した原因を追究する話など自分が行きたい場所にすでに行ってしまった命と向き合わざるを得なくなる中年男を真面目に生きさせる。

 丸山さんの卓抜したストーリー性の豊かさに、大阪の友が言っていた言葉をかみしめさせてくれる一冊であった。