イギリスのビーチャム・ハウス、音楽家たちの老人ホームを舞台にした物語である。ビーチャム卿が私財を出して作った私立の有料老人ホームなのであろう。現在、資金不足で閉園の危機にある。その危機を救うべき老音楽家たちが毎年一度開く公開コンサート、「ガガ」で資金調達しようとする。

 その目玉がヴェルディ作曲、オペラ『リゴレット』の第三幕で歌われる四重唱である。

 監督は『卒業』『クレイマー、クレイマー』『レインマン』の名優ダスティン・ホフマンで、ジュゼッペ・ヴェルディ生誕200年を記念して製作されたらしい。

 先週の『徹子の部屋』を見ていたら、プロモーションのためダスティン・ホフマンが出演しており、映画の存在を知った。


 カルテットはこの場合は四重唱のことである。てっきり女性だけの四重唱かと思い、観ていた。

 この映画の素晴らしいところは本物の音楽家を起用し、見事な歌唱、演奏を聞かせてくれるのである。

 カルテットで歌うのは「美しい乙女よ」。女性二人、男性二人がフィナーレを飾る。女性はジーン(マギー・スミス)とシシー(ポーリーン・コリンズ)、男性はレジー(トム・コートネイ)とウィルフ(ビリー・コノリー)がステージに立つ。ジーンとレジーは、しっかりと手をつなぐ。実はジーンとレジーは、以前9時間夫婦であったのである。ステージに立つ前にレジーはジーンに「結婚しよう」と言っていた。

 

 実際、カルテットは聞くことはできなかった。しかし、ホフマン監督は四重唱の素晴らしさを、この4人の名優の演技でわれわれに聞かせてくれたと思う。

 とくに、シシーの天真爛漫な存在、ウィルフの女性に対するマメさはこの映画の輝きを引き立てるものであった。ジーンの奔放な生き方、レジーのトラウマと向き合った生き方、それがまた重なり合う時がくる。永く生き、出会いを拒まなければ、人生は人間に素敵なプレゼントを用意してくれるのかもしれない。

 泣く映画でもなく、笑う映画でもなかった。しみじみと自分の人生と向き合える映画であった。

 98人収容の映画館は、満席であった。