『日暮れ竹河岸』は藤沢周平さんの掌編小説と短編小説を一冊にした文春文庫版である。

 掌編小説は「江戸おんな絵姿十二景」と中見出しをつけ、「夜の雪」から始まり12編で構成されている。

 掌編小説とは原稿用紙12,13枚ほどの量で書かなければならないので推敲をかなりしなければならない。

 短編小説は「広重 名所江戸百景より」と中見出しをつけ、「日暮れ竹河岸」から始まり7編で構成されている。

 「江戸おんな絵姿十二景」は作者が編集者に1月から12月までの簡単なあらすじをわたし、編集者に浮世絵の選択をまかせた。

 自分の作品と選んだ絵を照らし合わせ作品を微調整したと藤沢さんは言っている。


 「江戸おんな絵姿百景」は、市井で暮らす12人の女が絵から抜け出て動く。生きる。

 浮世絵から、見た目の美しさは観賞できるが、その女がどんな価値観を持ち、どういう暮らしをし、どんな人間関係をもっているのかはうかがい知れない。

 作家・藤沢さんは、幸せとは何かを12人の女を動かして探ろうとした。12人の女にはそれぞれ人には言えない陰影がある。それを受け止めたり、飲み込んだり、抱えながら生きている瞬間を描く。そして、最後にまた絵姿に戻る。

 

 「広重 名所百景より」の主人公は男であったり、女であったりする。

 「日暮れ竹河岸」は小商人である男が表どおりに店を構えたが、借金の返済ができず、その金策に走り回る姿を描いている。

 それでも夕暮れ時になり、声をかけていた友達がお金を都合して来てくれ、明日の都合だけつくことになる。

 日暮れ竹河岸の穏やかさが、目に沁み込んでくる1編となっている。


 藤沢周平さんの生前最後の作品集である。