東京には春いちばんが吹き、暖かくなった。

 暖かいのは、心が穏やかになり、とても快適である。

 過日購入したハラダのラスクを、週末のおやつと言って渡す日である。午後4時までの勤務の二人に渡すので、二人の勤務先の近くで会うことにした。

 4時になった。

 4時ちょっと過ぎの約束をしていたので、図書館によってから待ち合わせ場所で待っていた。

 午後4時5分、現れた。

 一人しかいない。

 もう一人は、「アンクルさんにメールをしたと言っていましたよ」。

 今日は午後5時までの彼女は、勤務が終わってからわたしの自宅を訪ねるということであった。


 しばらく、若いお母さんと話す。

 わたしが先日、みぞれ鍋ををごちそうになったお母さんである。

 明るいし、数学の先生を経験してきた女性である。

 先日、みぞれ鍋をごちそうになったときに。彼女の小学1年生の息子さんの算数の試験用紙を見せてもらった。

 どの試験用紙も100点であったが、わたしが感心したのは、設問に対して、数値と問題が何を求めさせているのかのキーワードにしっかりと赤鉛筆でアンダーラインを引いくていたことである。

 国語能力がみごとに算数能力を引き出していたのである。

 思わず聞いた。

 「このアンダーラインは誰が引いたの」

 「ぼくだよ」


 あの日、越乃寒梅をたらふく飲んだ。

 お母さんは二日酔いとなり、わたしは電車を乗り過ごした。


 そんな話しをして、娘と息子を迎えに行くお母さんと別れた。


 さて、5時になった女性とは、無事に午後5時15分に自宅で会えた。

 この女性はわたしが大好きは女性であるが、妻であり、母でもある。

 お土産を渡すのは数秒で終わるが、そのあと1時間話した。

 19歳の息子さんが、大学を休学して今年の4月から宣教師の実地研修を受けるとのこと。

 このお母さんが息子さんを洗礼させたのだが、高校時代から宣教師の道を考えていたようで、大学1年の課程を修了して、2年間の宣教師実習を受けることになったとのことである。

 実習期間の2年間は、家賃、生活費は自費で、家族との交流も一切ないということである、

 日本で実習なのであるが、2年間は親子の交流は厳禁、正月休みは帰宅も許されないということである。実習の終わるまで丸2年間は親子は離れ離れで暮らすという、

 すさまじい、実習である。

 まだ大人といえない若者がこのような生活を選び、親がそれを認める。わたしはただただ、頭が下がる思いであった。

 この若者が幾度の試練に立ち向かっていってもらいたいと思い、思わず、昨日観た『遺体 明日への十日間』を観ておくようにアドバイスをした。

 この3月に母子で観に行くと言っていた。

 彼女は、2月に故郷岩手に帰っている。

 映画ご遺体の話を聞いた彼女は、

 「岩手の海岸沿いを見ていた時に、墓地から流された墓石が防波堤まで流されて、引き上げられ海岸沿いにただ並べられていた。悲しくなった」

 とつぶやいた。

 東北は復旧すらしていないのである。

 彼女とは4月に谷根千に行く。

 自然を愛し、人間を愛する彼女をわたしは大好きであり、あんことお菓子を愛するこの女性が大好きなのである。

 わたしの大好きな、いちご大福を作って持ってきていただいた。

 明日食べる。