観客は40人ほど、40代以上の人ばかりであった。
橋爪功、吉行和子、西村雅彦など芸達者をそろえた小津安二郎監督に捧げられた作品は、東関東大震災や新幹線を登場させて現在を含み込ませ、いい味に仕上げていた。
山田監督は、どうしようもなく不器用な男とその男をしっかり支える女を描く天才である。
この作品も不器用な、しかも信念を持って生きている男を、好きになってしまった女。この不思議なつながりを淡々と描く。男はこんな家族になってしまったことを嘆くが、女は光を見ることができる。
ちゃんとしたコミニュケーションをとれなくなった親子、しっかりコミュニケーションをとれるのは他人。
親子の断絶、核家族の課題などの問題意識で撮られた小津の作品。山田は若者に託す。
二男のパートナーになる女性、ユキ(荒川ちか)ちゃんに、山田監督は思いを託す。
わたしは、なぜ、山田監督は、小津監督の作品後、50年がたった時に、同名の作品を創りあげたのか。
これは、突き詰めて考えることではないかと思うが、山田監督の痛々しいまでの崩れ去ろうとしている親子関係に対する、これでいいのかという叫びを聞いたような気がする。
小津作品の尾道ではない、もっと都市から離れている瀬戸内の島を夫婦の住み場所にしたわけは、まだまだ残る強い人間関係に未来をかけようとしたのではないかと思う。