おもしろい本を読んだ。

外山滋比古さんが大修館書店から2012年10月20日に出版した

 『ことば点描』である。

 なかでも、「敬語の論理」はおもしろかった。

 戦後、敬語は顧みられることが無くなった。

 そこに、外山さんは敬語の論理の考え方で明かりをともそうとしたのである。


 「敬語の基本は相手に不快の念を与えないようにという意識である。人間と人間がふれ合うとき、とかく、おもしろくない心理的摩擦を生ずる。それを避けるための潤滑油がほしい。敬語はそのために用いられる。相手を尊敬するかどうかではない。互いに気まずい気持にならないようにことばに油をぬるのが大人の知恵である」

 敬語の論理とは人間関係の潤滑油であると明確に言い切っている。


 そのうえに、コカコーラが日本に上陸したころの話をもってくる。

 当時のコカコーラ社は世界展開をしており、一つの宣伝戦略を実行していた。

 「Drink Coca Cola」を展開先の国のことばでいうことを要求したのである。

 日本のことばだと「飲め、コカコーラ」になる。

 日本人はまずいと考え対案を出したのが、

 「すかっと、さわやかコカコーラ」である。

 この表現であれば、消費者を敬う、敬語の心がにじみ出ていたというのである。

 わたしが就職したころはコカコーラ全盛の時代。

 独身寮に帰れば、コカコーラを飲み、研修のときにはコカコーラの宣伝を教材にしていた。


 さて、この敬語をもっとわかりやすく外山さんは説明する。

 敬語は敬遠の論理であるというのである。

 「コーヒーでよかったでしょうか」

 と、過去形こそ丁寧な言い方なのだというのである。

 

 わかりやすく説明してくれる。

 Go to the station please. 駅においでください、

 は命令形である。

 Will you go to the station?

 は、丁寧になるが、さらに、

 Would you mind going to the station?

 と言えば、「駅までおはこび願ってよろしいでしょうか」となる。 

 人間と人間との距離をことばの込めながら、付き合う。その潤滑油が敬語だと分かって、得した心持になっている。