昨日は、成人の日であった。

 平和の時代が60年以上続いている。

 平和の時代は自分の生き方を考えるだけで事足りる。

 ところが、空から焼夷弾が雨のように二十歳の女性に降り注いだ時代があった。

 そんな時代の思い出は、その女性から消え去ることはない。

 生きるために逃げる。

 そんな思いでしか語ることができない。


 息をつめ、聴いているしかない自分がいる。

 二十歳の時は、わたしもなにか浮き浮きしていた。

 少なくとも、生きることしか頭に浮かばなかった。


 戦争中で、米軍が都心に間断なく焼夷弾を投下してきたのである。

 制空権を失った日本はなすすべもなく、市民は逃げ回っていたのである。

 

 夢も希望もなく、ただ命を失いたくないという本能で逃げ回った二十歳がいたことを、忘れてはいけないとわたしは思う。