秩父事件をライフワークにしている倉田次郎さんの新人物往来社刊行の大作である。
わたしは、1979年に刊行された井出孫六さんの『秩父困民党』(講談社現代新書)で、秩父事件の歴史意義を知り、蜂起場所になった椋神社、秩父巡礼二十三番札所・音楽寺、総理・田代栄助の墓所などを訪ねたことがある。
秩父事件とは、1884(明治17)年11月1日に、生糸相場の国際的大幅下落、重税、高利貸しの非道により経済的に追い詰められていた秩父郡の困窮民が蜂起し、11月9日まで明治政府を相手に戦ったものである。
倉田さんは4000人余の裁判資料集『秩父事件史料集成』を読み込み、現地調査を踏まえ、蜂起前、蜂起、その後を日にちごとに丹念に叙述した。好著、力作である。
わたしは、神奈川のいまは亡き自由民権の郷土史家・大畑哲さんの人物を多く収載した武相困民党事件関連の著作を読んできたが、秩父困民の声を訊問調書を借りて多く収載された倉田さんの労を多としたい。
倉田さんは、書名に、著わした想いをこめている。
「蜂起」である。「事件」とは意外なできごと、もめごとの意味が強い。
「蜂起」とは、大勢の人がある意図をもって一斉に実力行使するの意味がある。