好ましい作家である。
 『まほろ駅多田便利軒』『風が強く吹いている』『仏果を得ず』と楽しく読ませていただいた。
 サラリーマンをやめて、便利屋を始め、中学生時代の知人との出会いから生まれる話、箱根駅伝をめざす、それに向けた仲間たちとのドラマ、そして駅伝当日、文楽の義太夫の道を志させた今の師匠との関係、相棒の三味線弾きとの葛藤、芸に生きるべきか、恋に生きるべきか迷う義太夫としての若者の必死な生きざま。
 どれも、主人公は、道半ばの若者である。
 この若者たちを、時代を、見事に描ききる力量に、ますますの成長を願っている。