2012年の芥川賞作家である。その年の純文学3冠を、笙野頼子以来の達成とあった。 
 『その暁のぬるさ』(集英社刊)を読んだ。芥川賞受賞の前に候補作になったという。
 多分愛する人を失った女のちょっとした出来事を、短編にまとめたものである。
 失った男のことは何もわからない、記憶をもてあそぶ女のこともまるで分らない
 わからないだらけのところを主人公に意味があるように鹿島田は叙述する。
 わたしは「ぬるい」がこの作品のキーワードであると思い、ぬるいが出てくる箇所を探した。
 「前略・・魂の中にあるぬるめの液体が沸騰して次々に泡が出て、わたしの肋骨を軽くたたくような感触を覚えた。後略」
 もうこうなると、作者自身の肉体にかかわることで、好きにしてよ、となる。
 愛する人を失ったのちの人生とはではないのである。
 どうでもよい人生を生きてきた人間がこれからもどうでもよい人生を生きる。

 まして短編だけに、この本には「酔いどれ四季」という作品が収録されていた。
 ボーイズラブ作家とその担当編集者とのやり取りだが、これは作者自身だと思った。
 何とも情けない生きる姿勢であった。