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こんにちは。血液内科スタッフKです。

少し間があいてしまいました（汗）。今回はあまり最新でもないし、血液内科の抄読会向きでもないのですが、JAMAに興味深い論文があったので、ご紹介します。

Associations of Internal Medicine Residency Milestone Ratings and Certification Examination Scores With Patient Outcomes

Gray BM et al, JAMA 2024, doi: 10.1001/jama.2024.5268

【重要性】

内科研修医に対する医学教育と能力評価は重要であるにも関わらず、内科医のマイルストーン評価や米国内科学会の専門医試験と入院患者アウトカムの相関関係についてのエビデンスは乏しい。

【目的】

内科医のマイルストーン評価、専門医試験の点数と受験者が受け持った入院患者のアウトカムとの関連性を検証する。

【デザイン・設定・参加者】

2016年から2018年に研修を修了し、2017年から2019年に米国の病院でMedicareの個別支払型加入者の入院ケアを行った6898人のホスピタリストを後方視的に解析した。

【主要評価項目・尺度】

主要評価項目には7日の死亡率と再入院率が含まれた。30日の死亡率と再入院率、入院期間、サブスペシャリストへのコンサルテーション頻度も評価された。解析は医療施設による固定効果を考慮し、患者の特性、内科医の経験年数、年次で調整した。

【曝露】

専門医試験の点数の四分位と、研修終了時のサブコンピテンシーの平均と同等の総合コア・コンピテンシー評価（低、中間、高）および同様に分類される知識コア・コンピテンシー評価を含むマイルストーン評価。

【結果】

455,120の入院において、患者年齢中央値は79歳（四分位範囲 73-86）、患者の56.5%が女性だった。1.9%がアジア人、9.8%が黒人、4.6%がヒスパニック、81.9%が白人だった。7日の死亡率と再入院率は、それぞれ3.5%（95% CI 3.4%-3.6%）、5.6%（95% CI 5.5%-5.6%）、30日の死亡率と再入院率は、それぞれ8.8%（95% CI 8.7%-8.9%）、16.6%（95% CI 16.5%-16.7%）だった。入院期間とサブスペシャリストへのコンサルテーションの平均は、それぞれ3.6日（95% CI 3.6-3.6日）と1.01回（95% CI 1.00-1.03）だった。

総合もしくは知識コア・コンピテンシー評価の高・低は、測定されたアウトカムとの相関はなかった。例えば、総合コア・コンピテンシー評価の高・低は7日死亡率と相関はなかった（95% CI −5.2%～10.6%；P = 0.51）。

それに対し、専門医試験スコア四分位でトップの群と最低の群で比較すると、有意に7日死亡率が8.0%減少し（95% CI −13.0%～−3.1%；P = 0.002）、7日再入院率が9.3%減少した（95% CI −13.0%～−5.7%；P < 0.001）。30日死亡率ではこの差異は−3.5%だった（−6.7%～−0.4%；P = 0.03）。試験スコアがトップの群と最低の群で比較すると、コンサルト頻度が2.4%高かった（95% CI 0.8%～3.9%；P < 0.003）が、入院期間や30日の再入院率とは相関しなかった。

【結論と関連性】

新規で研修を受けたホスピタリストにおいて、マイルストーン評価ではなく専門医試験の点数が、Medicare受給者の入院アウトカム改善と相関した。

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コア・コンピテンシーというのは、医学教育に興味がある方はご存じかと思うのですが（指導医講習で習う）、以下の臨床能力を指します。6つのコア・コンピテンシーと、22のサブコンピテンシーがあり、詳しくないのですが、米国ではこのコンピテンシーの評価が研修修了時に行われるようです。これを磨いていくことで、より良いホスピタリストになれるという指標と理解しています。

・Practice-Based Learning and Improvement（実践に基づいた学習と改善）
・Patient Care and Procedural Skills（患者ケアと手技スキル）
・Systems-Based Practice（システムに基づく診療）
・Medical Knowledge（医学知識）
・Interpersonal and Communication Skills（対人/コミュニケーションスキル）
・Professionalism（プロフェッショナリズム）

今回の研究では、このコア・コンピテンシー評価よりも専門医試験の点数のほうが入院患者のアウトカムに強く相関したという結果になります。これは、コア・コンピテンシーに意味がないということではありません。

一つは試験で測定出来るような知識は、やっぱり重要であるということです。この手の試験を馬鹿にする向きもありますが、特に内科医は知識があってなんぼ･･･という、単純な事実だと思います。スコアが高い医師のほうがコンサルテーション頻度が上がったというのは、自分の知っていること、知らないことを自分で理解出来ているからに他なりません。

もう一つは、コア・コンピテンシー評価の限界だと考えます。コンピテンシー評価は主に指導医の主観による達成度評価になりますから、どうしても（特に微妙なラインにいる研修医に対しては）高めの評価をつけてしまうのは人情として仕方ないと思います。コア・コンピテンシーの考え方自体は素晴らしいものであり、これを出来るだけ客観的に評価する方法を開発し、より良い診療につなげていくのが今後の課題でしょう。当科でのローテーター教育にも参考になる論文だと思いました。

おまけ

ちょっと分かりにくいですが、担々麺です！

【JAMA】内科研修マイルストーン評価および専門医試験スコアと患者アウトカムの相関