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スタッフHです。

今回は僕の専門としている血液感染症とも関連のある、CAR-T細胞療法後の免疫エフェクター関連血液毒性（ICAHT）のレビューがLancet Hematologyに出ておりましたので紹介します。

Immune effector cell-associated haematotoxicity after CAR T-cell therapy: from mechanism to management
Rejeski K et al, Lancet Haematol 2024, doi: 10.1016/s2352-3026(24)00077-2

CAR-T細胞療法が導入される患者層は今のところ度重なる化学療法が行われている状況がほとんどであり、血球減少をより起こす背景がある中で治療中の血球減少が問題となります。

CAR-T細胞療法中に起こる血液毒性は二峰性であるとされ、血球減少を誘発する因子として、T細胞除去とCAR-T細胞の輸注があげられます。前者はCAR-T細胞輸注の前に行われる前処置でフルダラビン・シクロホスファミドなどの強力化学療法を投与する事が一般的であり、当然骨髄抑制が起こります。一方で、前処置後の血球回復が得られた後に遅発性に更なる血球減少を起こす事があり、これはCAR-T細胞の輸注が原因である可能性がありますが、その機序は明らかにされていません。

CAR-T細胞療法ではサイトカイン放出症候群や免疫エフェクター関連神経毒性などややこしい副作用もありますが、今回の主題である血液毒性やB cell aplasia、低ガンマグロブリン血症など感染症に寄与する合併症も無視できません。

以下、レビューの概略を記します。

ICAHTはCAR-T細胞輸注前、早期ICAHT(daaya0-30)、後期ICAHT（day 31以降）の3つのフェーズに分けられる。
CAR-T細胞輸注前では輸注前の橋渡し治療、全身性の炎症、元疾患骨髄浸潤などが考えられる。輸注前の血球減少への進展および感染症のリスクを予測するモデルとしてCAR-HEMATOTOXスコアが用いられ、その妥当性が確立している。

CAR-HEMATOTOX: a model for CAR T-cell–related hematologic toxicity in relapsed/refractory large B-cell lymphomaThe hematologic toxicity of chimeric antigen receptor (CAR) T-cell therapy is widely recognized, but which patients are at highest risk for major prolonged

ashpublications.org

血球回復のパターンは後期血球減少が起こらずに血球が回復する早期回復パターン、二峰性の経過を辿りながら回復する間欠回復パターン、14日間以上高度血球減少が持続する再生不良回復パターンの3つがある。ICAHTが長い場合、数ヶ月から数年続く事もある。
ICAHTの原因とし①造血幹細胞の不応、②T細胞・B細胞の不均衡とクローナルな拡張、③骨髄内の限局的炎症、④全身性の炎症が考えられている。
CAR-HEMATOTOXスコアは重症ICAHTを予測できるが陽性的中率は高くなく、それとは別に重症感染症とも関連している。更にリンパ腫だけでなく骨髄腫における抗BCMA CAR-T細胞療法、マントル細胞リンパ腫におけるbrexucabtagene autoleucelにおいてもその妥当性が検証されている。
G-CSF不応の患者が一定数おり、更なるICAHTに対する治療として自家CD34陽性幹細胞を輸注する（HSC boost）という手段がある。超ハイリスク症例においては事前に採取しておく事も選択肢ではあるが、更なるコストの問題や負荷の増大や治療遅延などにつながる可能性がある。
G-CSFの投与はCAR-T細胞療法導入当初、炎症性毒性を誘発する、神経毒性を誘発する可能性が指摘されており、免疫関連毒性が避けられるであろう、輸注後3週間までは使用が避けられる傾向にあった。しかし、その後の知見でG-CSFの使用で重篤な合併症が増えるというエビデンスは得られず、早期好中球回復や抗菌薬曝露の短縮と関連がみられている。
その他の選択肢として、トロンボポエチン受容体作動薬もあるがエビデンスは限定的である。
Grade 3-4 ICHTに伴う免疫エフェクター細胞関連血球貪食症候群（IEC-HS）を起こす場合は、ステロイドパルスもしくはslituximabやanakinraなどの抗サイトカイン治療が選択肢となってくる。
Grade 4 ICHTが持続する（<5%）場合は、同種造血幹細胞移植も最終手段としてあり得るが、さまざまな要因を考慮し慎重に判断しなければならない。

当院ではCAR-T細胞療法をやっておりませんが、CAR-T細胞療法後の転院症例を見る事があり、ICHTも問題となります。もちろん治療関連合併症のみでなく、新たな別病態の関連や元疾患の悪化の可能性もありますので、治療するにしても慎重な判断を要します。

おまけ

写真はイオンマリナタウン店で、変わった建築物で興味があったのですが、米国のヘルムース・オバタ・カッサバウム（長）という建築事務所が手がけたそうです。Wikipediaをみると、名だたる建築物に関わっている様です。

【Lancet Haematol】CAR-T細胞療法後の免疫エフェクター関連血液毒性の機序と管理