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スタッフHです。

2024年5月31日から6月4日に米国シカゴでASCO annual meeting 2024が開催されました。今回はASCO2024で発表された多発性骨髄腫関連の研究を紹介します。

多発性骨髄腫の治療は、三剤併用療法や四剤併用療法の療法が標準として確立されてきています。これらの治療法には、プロテアソーム阻害剤（PI）、免疫調整剤（IMIDs）、および抗CD38抗体が含まれ、初発、再発難治いずれにの症例においても広く使用されています。特に近年の抗CD38抗体の発展は目覚ましく、既存治療との併用で非常に深い奏効を達成できています。国内では初発でダラツムマブ、再発難治でダラツムマブとイサツキシマブが承認されており、米国では2024年5月27日に移植非適応初発骨髄腫に対するイサツキシマブがFDAの優先的承認審査に回る（ASCO2024で発表されたIMROZ study）ことが発表されました。今後国内でも適応が拡大されるでしょう。

『【NEJM】多発性骨髄腫に対するイサツキシマブ併用VRd療法の第Ⅲ相試験結果：IMROZ試験』【お知らせ】当科ではスタッフ医師を募集しています。募集要項はこちらです。当科の紹介記事はこちらから。メールでのお問い合わせはhematology@aih-ne…

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ASCO2024で発表された多発性骨髄腫関連の新薬であるBelantamab Mafodotin（BM）関連の臨床試験の論文が2つ、6月6日のNEJMに掲載されました。BMは、CAR-T細胞療法などで標的抗原として確立しているB細胞成熟抗原（BCMA）を標的とした抗体薬物複合体で、抗CD38抗体の存在を脅かす薬剤であると言えます。

Belantamab Mafodotin, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma
Hungria V et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/nejmoa2405090

【背景】

BCMAを標的として抗体薬物複合体であるBMは再発もしくは難治性多発性骨髄腫における単剤での効果が証明されており、DREAMM-7試験では標準治療との併用の効果を検証する。

【方法】

この第3相/非盲検化/ランダム化比較試験では、少なくとも1ラインの治療後・治療中に進行した患者におけるBVD療法（BM+ボルテゾミブ+デキサメタゾン）とDVd療法（ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン）を比較評価した。一次評価項目は無増悪生存期間、主要副次評価項目は全生存率、治療反応期間、MRD（感度10^-5以下のNGS法）陰性率とした。
※BMは2.5mg/kg ivを3週毎に疾患進行まで継続。ダラツムマブは16mg/kg iv を1-3サイクルは毎週、4-8サイクルは3週毎、それ以降は4週毎で疾患進行まで継続。
※眼症状がなければ眼病変検査は投与前スクリーニング、少なくとも6回投与するまでは3週毎、以降は3ヶ月毎に行う。Keratopathy and Visual Acuity（KVA）scaleを用いる。

【結果】

494人の患者がBVd群（243人）またはDVd群（251人）にランダムに割り当てられた。フォローアップ期間の中央値は28.2ヶ月であり、BVd群の無増悪生存期間の中央値は36.6ヶ月（95%CI：28.4〜未到達）、DVd群では13.4ヶ月（95%CI：11.1〜17.5）で、ハザード比は0.41（95% CI：0.31〜0.53；P＜0.001）とBVd療法が上回っていた。18ヶ月時点の全生存率は、BVd群が84％、DVd群が73％であった。平均奏効期間の解析では、BVd群がDVd群よりも奏効期間が長かった（P＜0.001）。完全寛解またはそれ以上の反応およびMRD陰性ステータスは、BVd群の患者の25％とDVd群の10％でみられた。

BVd群の患者の95％とDVd群の患者の78％でグレード3以上の有害事象が発生した。治療関連副作用で治療中断した割合はBVdで26%、DVdで15%であった。眼関連有害事象は、BVd群でDVd群よりも多かった（79％対29％）このような事象は用量調整で管理でき、視力悪化の事象はほとんどが改善した。

【結論】

DVd療法と比較して、BVd療法は、少なくとも1ラインの治療後に再発または難治化した多発性骨髄腫に対して無増悪生存期間において優れている事が分かった。また、ほとんどの患者でグレード3以上の有害事象を起こした。

Belantamab Mafodotin, Pomalidomide, and Dexamethasone in Multiple Myeloma
Dimopoulos MA et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/NEJMoa2403407

【背景】

PI、IMIDs、抗CD38抗体を含む三剤もしくは四剤併用療法は初発骨髄腫の生存率を伸ばすが、ほとんどの患者は再発する。初回治療でレナリドミドを使用すると、初回再発時点でのレナリドミド耐性患者を増加させる。DREAMM-8試験では、BMの標準治療との併用の効果を検証する。

【方法】

この第3相/非盲検化/ランダム化比較試験では、レナリドミド曝露後で少なくとも1ラインの治療を行なった後に再発した患者を対象に、BM+ポマリドミド+デキサメタゾン（BPd 28日サイクル）とポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン（PVd 21日サイクル）を比較評価した。主要評価項目は無増悪生存期間とし、疾患反応と安全性も評価した。
※BMは2.5mg/kg ivをサイクル1 day 1、以降は1.9mg/kg iv をday 1に投与、疾患進行まで継続。ボルテゾミブは1.3mg/m² sc を1-8サイクルはday 1, 4, 8, 11に投与、以降はday 1, 8に投与し疾患進行まで継続。
※BPdではより眼診察の頻度を高くする。Keratopathy and Visual Acuity（KVA）scaleを用いる。

【結果】

302人の患者がランダム化され、155人がBPd群に、147人がPVd群に割り当てられた。フォローアップ期間の中央値は21.8ヶ月であり、BPd群の12ヶ月時点での推定無増悪生存率は71%（95%CI：63〜78）であり、PVd群では51%（95%CI：42〜60）であった。無増悪生存期間のハザード比は0.52（95%CI：0.37〜0.73：P＜0.001）でありBPdが上回っていた。全生存率はデータが未成熟であり評価出来なかった。治療へ反応した患者（部分寛解またはそれ以上）の割合は、BPd群が77%（95%CI：70〜84）、PVd群が72%（95%CI、64〜79）であった。完全寛解またはそれ以上の割合は、それぞれ40%（95%CI：32〜48）と16%（95%CI：11〜23）だった。完全寛解またはそれ以上の反応およびMRD陰性ステータスは、BPd群の患者の24％とPVd群の5％でみられた。

BPd群の患者の94%とPVd群の患者の76%がグレード3以上の有害事象が起こった。治療による永久中断と関連する有害事象はBPd群で15%、PVd群で12%と同程度であった。BPdを受けた患者の89%（グレード3または4の患者が43%）とPVdを受けた患者の30%（グレード3または4の患者が2%）が眼関連有害事象を発症した。それぞれ霧視は79%と15%、ドライアイが61%と6%、眼の異物感が61%と6%だった。BPd群の眼関連有害事象は BMの用量調整で管理でき、BPd群の患者の9%で治療中止が起こり、PVd群の患者では起こらなかった。

【結論】

レナリドミド曝露後の再発または難治性の骨髄腫患者では、BPdが無増悪生存期間においてPVdを上回り、より深く持続的な効果をもたらした。眼関連有害事象は多かったが、BMの用量調整により管理可能であった。

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BMは無増悪生存期間やMRD陰性などの昨今重要視されているアウトカムにおいて優位性が示されています。しかし有害事象が多く管理可能とはいえKVAで定義される視力障害が問題となるようであり、リアルワールドでの使用感などが気になるところです。骨髄腫の治療薬は多くあり、常にどのタイミングでどの薬剤を投与するか多くの議論がされていますが、BMに関しても今後立ち位置が確立していくことでしょう。

おまけ

写真は散歩中に見つけたパイナップルみたいな形状の花です。調べるとキュートレッドと言うそうですね。

【NEJM】ベランタマブ・マフォドチン関連第Ⅲ相試験結果：DREAMM-7・DREAMM-8