PET結果は親だけで大丈夫と言われたので1人で向かった。


往復8時間、朝早く出て、その日の夜遅く帰る事にした。

いま子供と離れて、泊まってしまうと、私がもたないと思った。


PETについて、素人が知れる範囲で必要最小限の情報を頭にいれた。

赤くなってたらまずいとか、光ってたらまずいとかその程度。


きっと診察室に入ると画像がすぐ目に入ると思ったから。


予約時間より早くついてしまい、予約時間より早く呼ばれた。

画像がすぐ目に入った。

(赤くない!光ってない!)


「検査の結果ですが、FDGもメチオニンも集積は見られませんでした。」

「はい。」

「活動性がありませんが、悪性です。」

「え?」


「地元で治療する事にしたんでしたね。今日私の見解について紹介状を持たせます。絶対に手術です、全部取るのか、一部取るのかは、そちらの病院で相談してください。」


「集積がないのに、なぜ悪性となるのか教えてもらっていいですか?」

「出来てる場所、出来方、場所が脳の内部である事。良性は脳の外側に出来ます。これは悪性です。グレード2の星細胞腫です。」


言い切った。


(えっとPETは何のためにやったんだっけ。

何の腫瘍か絞れるって言ってたっけ?

PET結果関係なく、場所と出来方からグレード2って言い切るなら、PETやった意味って…。)


少しパニック。


2人の小児脳外科医とのやりとりを思い出した。

(この人は専門医ではない。きっと何聞いてもスッキリしない。)


「ありがとうございました。」


待合室に戻り、画像を貰えるのを待った。

しばらくして、びっちりと封のしてあるA病院宛の封筒のみ渡された。中にディスクが入っていそうな感じ。


「…?これは…私が開けてもいい封筒ですか?」

「だめですよ!」

「(紹介状?)私、もうここにくるのは難しいので、地元で何かあった時のために有料で構わないので個人的に画像をいただけるようにお願いしてあったんですが…。」

「え!」

と中に戻る担当さん。


「そう言ったじゃん!」

と怒られてるような声が聞こえた。

「すみませんでした!」

と渡し直されたのは、

私用のディスク2枚(小児脳外科医に送る為)、おそらく紙しか入ってない薄さのグチャっと封された封筒(A病院宛)


(さっきの封筒からそのまま出しただけだよね?A病院宛に画像のデータは入れないの?)


モヤついた。

私が個別でもらったのは、小児脳外科医に送るためのもの。


でも言い合う気力もなかったので、そのまま病院を後にした。

とにかくここから帰りたかった。

大きくて立派な病院。こんなに患者がいて、検査施設もしっかりしてる。でも2度と来ないと思った。診察券も処分した。


疲労が倍増した。


私に医療知識があれば理解できたのかな。


帰るにもすぐのバスがなかった。

私は歩いた。

納得がいかなくてとにかく歩いて歩いて頭を整理した。土地勘ゼロ。なんとなくこっちかなぐらいで目印になる建物に向かってとにかく進んだ。


歩きながら2人の小児脳外科医にメール。

医者とのやりとりと、渡された書面の写真を送り、明日PET画像を送るので確認していただきたいと送った。


2人ともすぐに返事をくださった。



・メチオニンが集積しない腫瘍はあるが、結果より病変の活動性がないのは確か。急いで手術とはならない。

・こちらは場所や出来方から見て悪性ではないと考える。

・絶対手術と言い切った根拠がわからない。

・数ヶ月おきに画像を撮り、経過を診るべきである。

・手術を決めないことを強く勧める。

・PET画像お待ちしている。


何を信じたらいい。


私の気持ちは、この数ヶ月間↑↓↑↓を繰り返し疲労していた。


自分に起きた事なら逃げ道を探してたかもしれない。

仕方ないと思って受け入れたり、

もういいやってなってたかもしれない。

でも子供の事は逃げられなかった。

諦められなかった。

どうしても助けたかった。


助けるための知識も知恵もなかった。


調べた事や、医師から聞いた事、全部頭の中で練って練って行動するけど、正解がわからない。


今やってる事が正しいのか、真実に近づけてるのか、遠ざかってるのか、子供のためになってるのか、正解がわからない。


【悪性】という言葉が重すぎる。

帰りのホームで見た夕日がすごく綺麗で、こんな綺麗なのにこんなに悲しいと思って涙が出てきた。

あの子は絶対大丈夫、ここへは2度と来ない。


この市が悪いんじゃないけど、しばらくはテレビでこの市の特集などがやってるとチャンネルを変えていた。


病気を告知されたときに、

検索しない方がいいってよく言うけど、私は検索して小児脳外科医と出会いました。

出会ってなかったら、息子はどうなっていたか、考えるとゾッとする。


この2人とのやりとりがなければ私の精神はもたなかった。

100%絶望で埋まるより、1%でも希望があれば違う。


活動性がないと知れただけでも良しとしようと思った。思うしかなかった。