前中菊千栄さん・生田流(筝)
満月の夜、「観月会」と称して行われたパーティーで、
急遽、司会を仰せつかった。
ゲストは生田流(筝)当道会の九州総責任者 前中菊千栄さんと
お弟子さんのお二方。
琴に詳しいわけでもなく、下調べをする時間も無かったため、
出演前にお話を伺うことにした。
琴にもいろいろな流派があるが、生田流とは元禄8年(1695年)、検校の位を持つ大阪のお殿様によって開かれた流派だそうだ。
その昔は、一般のお弟子さんをとることも無く、お姫様のたしなみとして受け継がれてきたという。
現在の家元は5世(五代目)だが、前中さんは三世(三代目)家元の直門(師から直接教えを受けること)であるという。
「普通は70くらいで、お世話役は引退させていただくんだけれど、私は88歳でやっと退かせてもらったんですよ」と語る。
・・・私は30代以上の女性に、自分から年齢を聞くことはあまりしない。・・・
しかし、思わず聞いてしまった。
「今、お幾つですか」
「93です」
93歳で”奏者として琴を奏でる”
なんて素晴らしいことだろう。
「右手は腱鞘炎で痛めてるから自由が利かないんですよ」
と仰るが、琴爪をはめた3本の指は、弦の上を優雅に舞っていた。
話をする際のお声も、年齢を感じさせない。
聞くところによると、若い頃から声楽、ピアノやヴァイオリンといった洋楽も学んでこられたそうだ。
いつまでもお元気で、華麗な筝の響きを聴かせていただきたい。