日本語5級のクラスで、学生に
「ベトナムで一番暑いのは何月ですか」と聞くと、
「6月です」と答えます。
夜中に絶えずフラッシュ雷雨、
昼間の強烈な日差し、午後にまた雨。これが、ベトナムの植物をぐんぐん育て、
瑞々しい果物を作るのか
と、身体中にまとわりつく熱い湿気を感じなから出勤しています。
「バーキンせんせー。これを食べてください」
早朝、同僚のベトナム人先生が学校に持ってきたのは、
枝つきのライチ。
ここハイヅオンの特産物です。
唐の時代の書物に「ライチは枝から穫ると1日で色が変わり、2日で香りが変わり、3日で味が変わり、4日で色も香りも消えてしまう。」と記されているくらい傷みやすい果物なんだそうです。
そして、私の大好物。
というのも、
日本ではファミリーレストランのデザートで出てくるような冷凍ライチしか見たことがなく、
初めて食べた新鮮なライチは、本当にライチか疑ったほど。
ライチ様をいただけるだけで、ベトナムに来た甲斐があるとでも言うもんです。
ですが、旬は5月末からたった1ヶ月だけ…。
あと二週間なのです。
まるで日本の桜のように名残りおしい。
毎日毎日、味を確かめながら、ちゅるん、ちゅるんと透き通った、果実を頬張り、甘いしたたる果汁に手が止まりません。
「あ、バーキン!食べ過ぎ!体が熱くなるよ!」
「熱くなる?」
体が熱くなるって、代謝がよくなるならいいんじゃない?
「食べ過ぎは、のぼせちゃうよ!吹き出物が出来るし!」
どうも、本当にライチ病というのがあるみたいです。
でも、もう、来年の5月までお目にかかれないなら、吹き出物ぐらいなにさ!
そう言い放ち、
私はふとおでこにできたニキビを触りました。