ご存知の方も少なくはないと思いますが、「遺言書」の法的効力は

遺言者の死亡後に発生いたします。従って、法律効果の発生した

時点では遺言者(被相続人)の意思を変更する事はもはや出来

ません。つまり、「遺言書」の内容の変更は生前しておかなければ

ならない事から、慎重な態度が望まれるわけです。

「遺言書」は、前の「遺言書」を破棄しなくとも、新しい「遺言書」

(記載されている日付等から推定できる)が有効となり、以前の

「遺言書」は無効となります。ただし、この場合も法律上の要件を

充足した法律上有効な「遺言書」である必要があります。

また、推定相続人の確認は、非常に重要不可欠であって、

被相続人の親族である可能性のある人ももれなく調査する必要

があります。もし、「遺産分割協議書」を作成しても、相続人に

不備がある場合、無効になったり、せっかくの作成努力が無に

なってしまうからです。

まれにあるパターンですが、推定相続人が行方不明の場合が

ありえます。この場合、調査してもどうしても発見にいたらない

ケースもありえます。それでは未来永劫相続問題を解決できない

のかといえば、そうでもなく、「失踪宣告」という手段もあります。

本来、遭難等で生死不明の場合に「失踪宣告」をして、ひとまず

本人は死亡したという事にして法律関係を整理しようというのが

趣旨ですが、これを応用するわけです。もちろん、「失踪宣告」の

後、本人の生存が明らかになる場合もあるわけですが、例えば、

前述のとおり、「遺産分割協議書」が成立して、遺産分割が終了

しているような場合、当該「遺産分割協議書」そのものが無効に

なるのではなく、分割終了後の相続人から当該本人への相続分

相当の財産供与がなされれば法律上の問題はないのです。

このように相続問題には、さまざまなバリエーションがあり、近年

では、国際結婚も少なくなく、推定相続人がすでに海外へ出国して

いるというケースもあります。また、日本と文化的法律的にも異なる

諸国も少なくない事から、今後、遺言・相続問題は、更に、複雑化

してくる可能性もあるものとみています。