人間の存在とは何か。もっと広げて考えると、およそ存在しているとはどういう事か。存在と

非存在とは何か。考えてみると不思議な事です。有と無に峻別して考える事も困難です。もし

無を考えてみるとその時点で無ではなく有となってしまうからです。存在しているであろう自分

の存在を有と仮定すれば、有である自分の考えた無など有の一つにすぎないからです。勿論

観念的に無を考える事が出来るとこれも仮定して、考えている無とはいったいどういうもの、

あるいは状態なのか。有と仮定した我々には想像できないものあるいは状態なのではないで

しょうか。我々と我々の周囲に存在しているであろうと我々が思っているものを有であると仮定

して、自分と他の存在しているものであると認識しているその何かをどのような関係で考えれ

ば良いのでしょうか。およそ自分と自分以外の何かを峻別した有の中で考える事すら困難な

事のように思えます。そうであるならば、最早、自分と自分以外を峻別する事すら無意味にな

るように考えられます。自分という意識の内と外と考えるのも変な事のように思えます。この点

確かに、自分は他人の認識している事を直ちに自分の認識として捉える事はできません。だ

から、自分は他人とは別の存在なのであると考える事もできます。しかし、実はその認識は今

自分の認識の範囲で捉えられている範囲にある事をもって判断しているだけなのです。従って

現在認識している自分の認識の範囲を根拠に自分と他人を別ものと峻別する事はできない。