皆さんの地域は雪が降っていますか?

茨城は降っていませんが、冷たい雨が降っています。

まだ朝食を食べていないので、余計に寒さが堪えています。

 

さて、本日の「文学の窓」は坪野 哲久の歌を取り上げます。

 

 

菜の花をコップに挿して相向ふ春ごとにかかるきみとの記憶

                                       ―坪野 哲久

 

なのはなを こっぷにさして あいむかう はるごとにかかる きみとのきおく

 

 

菜の花の季節は出会いと別れの季節である。

菜の花の香りとともにやってくる、

あなたとの思い出の数々。

 

五感と記憶が結び付けられるのは、

よくある事だが、この作者は菜の花の黄色と

香りの2つが思い出と結びついているのである。

 

菜の花をコップに挿すのは、

きれいだから、という理由のほかに、

昔を懐かしみ、甘い記憶に身をゆだねる、

という思いもあるのだろう。

ちょうど菜の花の甘い香りのように・・・

 

以前好きだった君は、どこで何をしているのだろう。

まだ素敵なままでいるだろうか?

記憶は不変で固定しており、そして純化されるものである。

それゆえ思い出は年とともに、その価値を増していくのだ。

 

春の記憶、学生時代、恋・・・

毎年巡ってくる思い出は、菜の花とともにである。

 

文学ディレッタント  飯島 昭典