女性の尊厳 国際社会に遅れをとるな | 飯島 愛ちんのガッタス・オスピタル

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ダイバーシティ進化論(村上由美子)

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 トランプ政権は今週末、発足1周年を迎える。女性蔑視発言を連発する大統領誕生により、米国のジェンダー平等の動きは後退するのではと懸念された。しかし2017年末に「今年の人」として米タイム誌の表紙を飾ったのは、沈黙を破った性的加害行為の被害者の女性たち。「#MeToo」運動が広がり、今まで泣き寝入りしていた被害者の声が社会を動かしたのだ。米国企業幹部の人選には、性的ハラスメントに関する厳格な「身体検査」が要求され始めている。

 翻って日本。安倍総理は「女性が輝く社会づくり」をモットーに女性活躍を推進してきた。女性の就業率の上昇など一定の成果が出てきてはいるものの、女性蔑視を容認する社会環境が著しく改善したとは言えない。性犯罪は当然だが、容姿や私生活に関わる発言でさえも、性的加害となりうることの認識は不十分だ。

 男性上司や同僚が悪気なく発言した一言が、女性に不快感を与えることが往々にしてある。特に酒の席は不適切な言動を誘発しやすいが、飲酒が言い訳になると考えるのは時代錯誤だ。女性軽視の社会傾向は深刻な性犯罪の温床にもなりうる。長年の欧米生活の後に帰国した際、私が最も強烈に感じたカルチャーショックは、女性軽視を黙認する世間の雰囲気だった。

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが男性記者に性的暴行を受けたと訴えている件が日本であまり注目されていないと報じたニューヨーク・タイムズの記事が、海外で大きな反響を呼んでいる。複数の外国人の友人から驚嘆のメールが届いた。勇気を振り絞って沈黙を破った女性をなぜ日本社会は支えないのか。いまだに男尊女卑がはびこっているのか。多くの外国人の目に映る日本は、前時代的な排他社会らしい。反論したいところだが、説得力のある反論の根拠が見つからない。

 「女性が輝く社会づくり」の大前提は、女性への尊厳であろう。そこには、普遍的な価値観が存在する。女性軽視を日本特有の文化と説明することは、鎖国時代なら許されたかもしれない。しかし今日、時代遅れの価値観から脱却できない日本が、「人権後進国」とのレッテルを国際社会に貼られる代償は大きい。国内の自発的な世論醸成が日本人の意識変革につながることを期待したい。海外メディアを介した「外圧」がなければ、日本は変われないと言われないためにも。

 
村上由美子 
 
 経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。