『一番酷い仕打ち』
閉鎖環境での生活も、ついに最終日。日記を書く者、成績表を見つめる者、受験者たちはそれぞれの想いを胸に、最後の朝を過ごしていた。
六太は、『宇宙飛行士にふさわしい2人』の選出方法について、ずっと考えていた。
『どーやって決めればいいんだ?』誰だって自分が一番宇宙飛行士になりたいと思っているに決まっている。5人の中からその2人を自分たちに決めさせることは、グリーンカードより何より一番酷い仕打ちだ、と。
そんな思考から逃れるように、六太はまた『コロコロ六太』へと変身する。六太が出した成績は、ダントツの最高記録だった。
時間は刻一刻と過ぎ、管制からいよいよ指示が出された。
『どんな方法でも構いません。2時間以内に2人を選んでください』
六太は結論が出せず迷い悩んでいた。非情に切り捨てるのではなく、運に任せるべきなのか、と。
『どっちが正しいんだ……? 正しい方法は……?』
ふいに、六太はシャロンの言葉を思い出す。
『迷った時はね――どっちが楽しいかで決めなさい』
「――ジャンケンで決めようか」
六太が提案した方法は、ジャンケンだった。一同が驚く中、いち早く古谷が反対する。古谷はこれまでやった全課題の成績を記録しており、ジャンケンには納得できないというのだ。そして、歯を食いしばって続けた。
「俺は……最下位や――最下位やったわ 俺……」
古谷の中で、もう2人は決まっていた。その名前を言おうとした時、六太が口を開く。
「やっさん、前にスルドイこと言ってただろ――ジャンケンを超える公平な方法はない――って」
この5人はジャンケンみたいなものであり、グーみたいなヤツ、チョキみたいなヤツ、パーのようなヤツがいるのだと。
「誰が一番強いか、答えを知ってるヤツいるか?」
ジャンケンで決める方法に納得したA班のメンバーは、それぞれ拳をかまえた。そして――。
『ジャンケン――――ホイ!』
ボックス内に、しっかりと、大きな声が響き渡った――。