『バスバス走る』



ケンジもせりかも、強い覚悟や動機があって宇宙を目指していると知った六太。しかし自分はただ宇宙への憧れだけ。ほかの受験者と比べ、自分にはなにがあるのかと、憧れだけで宇宙飛行士を目指してよいのかと迷っていた。



三次審査当日、六太はシャロンに会いに来ていた。子どもの頃を知り、宇宙への想いの強さを知っているシャロンは、六太の気持ちを優しくほぐす。



「好奇心だったり、憧れだったり。入口は夢見る少年少女よ。ムッタと同じ。――迷うなら、なってから迷いなさい」



三次審査は2週間の泊まり込みで行われるという。合格者人数は前回の3倍、15人が残っていた。理事長・茄子田のかけ声で、さっそく外へ移動するよう指示される六太たち。そこで待っていたのは、窓という窓を鉄板で塞がれた、異様なバスだった。



 受験者たちは携帯電話や腕時計を預け乗車。座席に座ってすぐ、違和感に気づいたケンジが六太に同意を求めた。



「なぁ、ムッ君……気づいた?」



 「あぁ……乗った瞬間ピンと来たよ」



 注意深いケンジは、車内の全席がカメラで監視されていることに気づいたのだ。しかし六太が気づいたところはまったく違っており――。



『このバスの運転手は――ヅラだ!』



 車内からは景色は見えず、行き先も極秘。しばらくすると、JAXA職員の指示で受験者たち同士の『交流会』が始まった。隣り合った人と10分間きっちり話し合い、合計140分間しゃべり続けろというのだ。何人かが動揺する中、六太だけは『せりかさんと二人きりで話せる!』と意気揚々。



 140分が過ぎ、それぞれどんな人物なのか知ったところで、今度は『自分も含め宇宙飛行士に向いていると感じた人の優先順位をつけろ』と指示が出る。何に使われるのか全く不明だが、皆黙々と書いていく。バスは受験者たちが就寝したあとも走り続け、何時間走ったのかもわからなくなった頃、ついに停車する。そこで六太たち受験者を待っていたものは――?