「シュガー・ラッシュ」感想【ネタバレ若干】 | カキオキ

「シュガー・ラッシュ」感想【ネタバレ若干】

シュガー・ラッシュ」感想。
ビデオゲーム世界の舞台裏での大冒険。
100点満点で100点です。
オールタイムベスト更新しました。

アクションゲームの悪役ラルフとプログラムの不具合に侵された少女レースゲームの少女ヴァネロペの大冒険。


すげえ映画ですよこれ。
3Dアニメだとか、ファンタジーだとか言ったジャンル映画として100点ではなく、全方位に、誰にでも100点の映画だと自信を持って薦められる素晴らしい作品。
ビデオゲームが題材ではあるけど、知識は特に無くても、あれはどういう意味なんだろうと疑問に思ったりして、心に引っかかってしまうような点はほぼ無い作りなのが素晴らしいですね。
もちろん、ビデオゲームの知識があればより楽しめる事受けあい。
数々の人気キャラクターとカメオ出演や、あのコマンドやら、エクスクラメーションマークやら、悪役達がディスカッションしあうセラピールームが実は世界一シンプルで有名なあの悪の巣窟だったとか、抱腹絶倒のネタも満載です。
ちなみにあのコマンドで爆笑してたの僕だけでした。
tedの熊ん子の時もそうだったなあ。

本作で感心したのは、突拍子も無い本作独自の設定やルールを長い解説抜きで解りやすく、かつ面白く観客に提示している所。
例えば、ゲームマシンに何か不具合が起きたときは外界で故障中の張り紙が貼られ、それがゲーム内のキャラクターの視点からも確認出来る所等です。
張り紙を貼られる事により、外界の光がさえぎられ、心なしかゲーム内から見ると夕焼け色に変化し、終末っぽい雰囲気を漂わせたりする所など実に上手いです。
後、本作のメイン舞台となる、お菓子の国のレースゲーム「シュガー・ラッシュ」に設定された火山口の溶岩だまりとそれを噴出させるあるアイテムに現実のジャンクフードをあてがっている所なども実に秀逸。
設定が綿密に作られているので説明などほぼ無しでも、それらがどう機能する物なのかを、笑いや感動と共に絵で伝わってきます。
キャラ設定も実に秀逸全員なんて書いてたらきりが無いので代表的な所を挙げます。
ドンキーコングシリーズがモデルと思われる80年代の「フィックス・イット・フェリックス」の主人公フェリックス(恐らくはドンキーコング3の主人公がモデルと思われる)や同作のサブキャラクター達も80年代のゲームキャラらしく、動きが滑らかでなく2コマでしぐさを表したりするコマ抜き処理が楽しく、また、一目で「こいつは古いゲームの登場人物だな!8ビットって奴か!」と味わいと共に知らせる効果も持ち合わせているのが素晴らしい。
主人公ラルフも同作「フィックス・イット・フェリックス」のキャラクターではあるが、流石に映画全体の主人公なのでコマ抜き処理をさせるわけにはいかないからだと思うんだけど、代わりにカールじいさんよろしく、指を四角く造形する事でローレゾリューション(低解像度)なオールドゲームキャラクターである事を表現していたりと中々巧みであります。
特にゲームセンターのゲーム達が全て舞台裏で繋がっていると言う、本作最大の設定を、ゲームセンターの各ゲームの電源プラグを集中して繋いでいる縦長のテーブルタップを、外見はそのまま各ゲーム世界を繋ぐハブ、つまり駅として処理している所は素晴らしかった。
このテーブルタップの駅はニューヨークのグランドセントラルステーションを模しているとの事ですが、古今東西各ゲームの世界観が一気に交流する雑多感がなんとも楽しい。
ゲームが撤去され、行き場を失ったゲームキャラクターが、さながらホームレスのように構内に入り浸る姿は楽しくも哀愁が漂う。
年代もビジュアルもシステムも全く異なる各ゲームのキャラクター達が一作品内に会しているのに、観ている側が拒絶反応にクラクラする事無く、各ゲーム世界への場面転換が実にスムーズに出来る素晴らしい設定だと思います。
要は、スターウォーズシリーズ等に良くある、全く異なる世界観の舞台や惑星にシーンが飛んだ時の連続感の途切れやドライヴ感の消失が、本作では一切無いのです。
文字通り世界観の異なる複数の世界を行き来してもストーリーの連続性が強く保たれているのは、ターミナルステーションに限らず、あらゆる世界設定やキャラクター設定を本当に極限まで煮詰めているからなんだろうなと思いました。

ストーリーはもう完璧で、言う事が無いですよ。
テーマとしては良くある自分探しの話なのかも知れませんが、ゲームの悪役と言う絶対に外れてはならない役割からもがくラルフは解りやすく心に刺さりました。
ラルフと同じく自分探しつまり自己改革を試みる少女ヴァネロペとの友情。
最終的には※ネタバレ反転少女を救いヒーローになる為自分の役割どころか生命を投げ出す決心をするラルフ。
そしてラルフと同じく自己改革を目指したがヒーローの心を持ち合わせず、彼とは全く逆の選択をしてしまった
ある人物の顛末。
途中までは、トラブルメーカーの主人公が余計な事をしやがった話とも取れますが、表面的な役割は何も変わらずとも、自分のみならず周りの全ての人達の心を変えたラルフはもう最高ですよ。

声優陣も素晴らしいですね。
ラルフ役の山寺宏一さんはもう今更何も言う事は無いですが、何と言ってもヴァネロペ役の諸星すみれさんには参った!
ヴァネロペからみなぎる生命感と内に秘められたプログラムミスへの不安感を若干13歳の子が演じていたとは!
僕的には新ジャイアン声優に抜擢されたのは14歳だった!っての以来の衝撃ですよ。

最後に一つだけ、ホントくだらない不満。
劇中で最初に「ターボ」の単語を発するのが「ストリートファイターII」のベガなのがいただけない。
ゲーマー視点だとベガの台詞で「ターボ」とか言われると、「ストリートファイターII’TURBO」に引っ掛けて、バージョンアップする?的な意味の小ネタなのか?と思ってしまうわけですよ。
当たらずとも遠からずですが、小ネタなのか、物語のテーマの本質なのかでは全然違います。
この時点で「ターボ」はあくまで単なる伏線で、へんな勘違いを観客がしてしまうのは製作者の意図するところでは無いと思います。
実際、僕はこの後再び劇中で「ターボ」が出てくるまで心の奥にこの件が引っかかりっぱなしでしたよ。
「ストリートファイターII’TURBO」の存在を知らない人にはなんの問題もありませんが、ある程度ゲームの知識があるとここは引っかかってしまいます。
僕だったらその台詞は隣のクッパに言わせるか、「ターボ」って名前自体を変えますね。
まあ、ホントくだらない取るに足らない不満ですよ。



AKB48の世界共通劇中歌&世界共通エンディング曲「Sugar Rush」も入ってます。
シュガー・ラッシュ オリジナル・サウンドトラック