「桐島、部活やめるってよ」感想【ネタバレほぼなし】 | カキオキ

「桐島、部活やめるってよ」感想【ネタバレほぼなし】

桐島、部活やめるってよ」感想。
マルチ視点で徐々に立体的に浮かび上がるドラマ構造を心ゆくまで楽しめる真の3D映画。
100点満点で90点です。

じわじわじわじわと強烈に面白かった。
正直、らっきょうが転がる程度の話なのに、視点を変えて繰り返すとこんなにも面白くなるものなのか。


宇宙人も巨大ロボもでて来ないし(ゾンビとセクシーボイスは出てくるが)、取り立ててありがちなスペクタクルシーンも無いので、誰が観ても面白い映画では無いけど、踏み絵的な意味で万人に勧めたい映画でした。
「絶対面白いから」ではなく、「これ、面白かったかどうか教えて」と凄く聞きたくなる映画。
「面白くなかったよ!」って言われればそれはそれでまた良い。
その価値観ギャップこそがこの映画の楽しさそのものなのだから。

僕の行った回はお盆帰省中の新潟県の県央ワーナーマイカルのレイトショウで公開5日目にして客が5人しか居なかったのだが、僕の一列前に座ってた30前後の微ヤンキー系の男(以下、アラサー微ヤンキー)が、しきりにiPhoneで時間確認している光が目に入って、かなり呆れた。
ただし、映画が面白すぎた為、アラサー微ヤンキー(以下、アラビヤン)の暴挙もさほど気にはならなかったのは不幸中の幸い。
この映画、僕は大変面白く観賞していたのだが、アラビヤンに取っては、面白くなかったのは間違いない。
この状況って、この映画内で描かれている価値観ギャップが、まんま客席に逆投影されたようで、何か良く判らんけど凄く楽しい気分になった。
音楽のライブで踊ったり歌ったり、スポーツ観戦で必死に応援するのとはまた違った次元で、コンテンツと自分が同化するような奇妙な印象を感じた。
こんな体験は初めてだ。

できれば、あの時のアラビヤンにもう一度会って、桐島の感想を聞いてみたいなあと思った。

なんか、今回はエッセイみたいな感想ですが、本作のディティールに踏み込んだ感想は他の方々が濃密で深い奴をいくらでも挙げているので、身に起きたシンクロ体験を吐露してみました。


繰り返し映画の傑作。
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