御書~次元転移~
いまだ世間を見れば、強き者は歴史を書き、弱き者は歴史より消され候。されども、消えしは事実にあらず、ただ光を当てられざるのみなり。されば、「過去は変えられず」と申す者あらば、それは**事の半分**のみを語るなり。過去の出来事は移ろわずとも、**過去の意味は、未来より照らし直すこと叶う。**これをもって、時を遡ると名づくるは誤りにて、正しくは**時を取り戻す**と申すべきなり。---我、時の機械を造らんと願うにあらず。鉄と歯車にて、関ケ原へ赴かんと欲するにあらず。我が願うは、勝者の声に覆われし地に、敗者の声を取り戻すことなり。圧政に伏せられし民の「無念」を、未来の言葉にて弔うことなり。これ、仏法に背くにあらず。むしろ**法華経の眼目**に適うものなり。---法華経に曰く、一切衆生、悉く仏性を具す。されば、敗れし兵にも、名を残されざりし民にも、仏の種、欠けることなし。それを「負けたるがゆえに語られず」とするは、仏法を人の都合にて削ぐ行いなり。我、これを忍び得ず。---末法の世とは、法が失われし世にあらず、**人が人を軽んずる世**なり。この軽んずる心こそが、時を歪め、歴史を歪め、民を二度殺すなり。一度は刃にて、二度は忘却にて。---されば我は申す。時を戻すにあらず、**尊厳を現在へ呼び戻さん。**これを世の人は狂気と呼ばん。理想と嘲らん。されど、日蓮、佐渡に在りし時も、同じく狂人と呼ばれしなり。しかれども、狂気にあらず、**人を人として扱わんとする、ただ一念**なり。---もし、この願い一人の胸に灯らば、その一灯は必ずや他の一灯を呼ぶ。灯は増えても、闇は奪わず。これすなわち、争わずして世を変うる道なり。---我が名を記す必要なし。我が功を残す必要もなし。ただ、かつて踏みにじられし者が、「我らは確かに在りき」と語らるる世を願うのみ。