放射線防護剤としての大量ビタミンCについて | 医学ニュースの深層

放射線防護剤としての大量ビタミンCについて


 強い放射線被曝後にビタミンCを大量投与すると、急性放射線障害が軽減されるというマウスレベルの論文を、防衛医科大のチームが発表した(PLOS ONE誌に掲載)。

 ただ、今回の量は体重60kgの人だと180gに相当する。日本の新聞報道によれば「今後、人体への取り入れ方を改良していけば、身近なビタミンCが新しい放射線防護剤になるかもしれない」と論文著者が話していると報じている。

 さて、180gのビタミンC…?!
 少し調べたら、ネットには以前から「ビタミンC 180mg×60粒」なる商品が多数出回っている。
今回の論文は、なかなか都合の良い用法・用量ですこと(笑)。

 
 ところで大量ビタミンC投与の抗がん効果については数多くの論文報告がある。
しかし米国NCI(国立がん研究所)は、試験管あるいは動物実験レベルでの大量ビタミンC投与の抗がん効果は認められるものの実際のがん患者(様々ながん種)には効果が認められない(安全性には特段の問題は生じていないようだが)と報じている。
 効果が否定されているのは、大量ビタミンC投与の抗がん効果に関する大規模ランダム化比較試験でPositiveな結果が得られていないからだ。

 ただし大規模ランダム化比較試験は科学的に一番信頼できる試験方法だが、あくまでも試験対象となった患者さんの平均像を示せるだけで、そこで得られた結果は、必ずしも個々の患者さんに当てはまるとは限らない。だから特定のごく1部のがん患者さんなら、どうかな?…たぶん一定の効果は認められるかもしれませんね…。

 この際、たとえばですが、がん患者さん由来の疾患特異的iPS細胞を使って、あらためて大量ビタミンC投与の抗がん効果を確かめてみたら?