ヒトES細胞で再生医療、世界初の臨床試験 | 医学ニュースの深層

ヒトES細胞で再生医療、世界初の臨床試験

 ES細胞で再生医療、世界初の臨床試験 米バイオVB 米バイオベンチャー企業のジェロンは11日、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使った世界初の臨床試験(治験)を開始したと発表した。同社は昨年、米食品医薬品局(FDA)から治験の認可を得ていた。 治験ではジョージア州アトランタの病院に入院している胸部脊髄(せきずい)損傷の患者に、ES細胞から作った神経の細胞を移植して運動機能を再生させる。ジェロンのトーマス・オカルマ最高経営責任者(CEO)は「今回の治験開始はES細胞を使った治療分野において画期的な出来事だ」とコメントした。 同社は今夏にも治験を開始する予定だったが、目的の細胞以外の不純物がごくまれにできることが判明。FDAから安全性を再確認するよう指示されたため、開始が遅れていた。 (日本経済新聞)

コメント:

ようやく始まるのか・・・。というのが、まず最初の感想。

ジェロンの株価は、どうなってるんだろう?
・・・というのが、第2の感想(笑)。・・・6%強値上がりした(ジェロン株はジャスダックに上場されている)。

 このヒトES細胞での臨床試験の帰趨が、ヒトiPS細胞利用の再生医療の臨床試験に今後、多大な影響を与えるだろうということは、前にも、このブログで指摘したが、今でも、その意見は変わらない。
付け加えておくと、ヒトiPS細胞利用の再生医療の臨床試験・・・特に「他家移植」(たとえば、他人の皮膚などからiPS細胞を創り、iPS細胞バンクに保存されたものを神経細胞にして、それを患者さんに細胞移植治療する)の場合・・・免疫的に拒絶反応が起こりうる。
(ちなみに自家移植・・・「My iPS細胞」を使った細胞移植治療・・・ならば、このリスクは無い。)

 ヒトES細胞では、確実に「免疫拒絶」が起こるが、どこまで、それを抑えられるか?
免疫抑制剤の使用は、どの程度必要になるのか?、そのリスクは?、患者さんは本当に癌にならないのか?
・・・今回のフェーズ1では、こうしたこともテストされるわけだが、こうしたことを含めて、ヒトiPS細胞利用の「他家細胞移植」治療法の臨床試験は、今回のヒトES細胞の試験方法に準じた進め方が要求される。
また、今回からの臨床試験で、どの程度の効果・安全性が示されれば、こうした治療の「臨床使用承認」となるのかが注目の的だ。

 ただ、対象患者さんが、車いすなしの生活をおくれるほどには、ならないだろう(特に今回のフェーズ1は、上記のような安全性評価が主目的だから、こういう劇的効果は、望みにくい)。フェーズ2、フェーズ3に順調に進んで、被験者の中で、杖をついてなら、歩けるようになったという結果を見たいが・・・。

 まあ、総じて、(日本期待の)ヒトiPS細胞利用の「他家細胞移植」治療法の臨床試験(今回対象の疾患に限らない)の帰趨を占うことになる「今回のヒトES細胞利用の臨床試験」だ。

 なお、今回の対象疾患よりは、心筋細胞移植とか、肝不全治療目的の肝細胞移植とかのほうが、「被験者の中で劇的効果を得たものがいる確率」は高くなると思いますが・・・。

いずれにせよ、結果を検証できる日が楽しみだ。