今日発表されたiPS細胞研究のニュースについて:iPS細胞、がん化しにくく 京大が新製法!?
京都大の中川誠人講師と山中伸弥教授らは、安全で質の高いマウスやヒトの新型万能細胞(iPS細胞)を作る手法を開発した。がんを引き起こす恐れがある遺伝子に代えて別の遺伝子を使うことで、がん化の危険性を大幅に減らした。ヒトiPS細胞の作製効率は5~10倍に向上した。iPS細胞作りの標準方法となる可能性があり、将来の医療応用に弾みがつきそうだ。成果は米科学アカデミー紀要(電子版)に27日掲載される。
iPS細胞は皮膚などの細胞に4種類の遺伝子を入れて作るのが基本。このうち「c―Myc」という遺伝子はがんを引き起こす危険性があると指摘されていた。残りの3種類で作る安全な手法も開発されたが、この方法によるiPS細胞は品質が低かった。
山中教授らの研究チームはc―Mycの代わりに構造がよく似た「L―Myc」に注目。それぞれの遺伝子の働きを比べるため、ほかの3遺伝子と一緒に 材料細胞に入れてiPS細胞を作製。できたiPS細胞から作ったマウスを育て、約2年調べたところ、c―Mycを使うと約7~8割で腫瘍(しゅよう)がで きたが、L―Mycではほとんどできなかった。
作製したiPS細胞の品質は、iPS細胞から受け継いだ遺伝子が交配後も子孫に引き継がれるかで評価する。3遺伝子だけの手法では引き継がれる率が低いが、新手法は高率だった。さらに、新手法ではヒトiPS細胞の作製効率が向上。できた細胞の中でiPS細胞が占める割合も6~7割と高かった。
iPS細胞は、体内の様々な細胞や組織に成長する能力を持ち、機能が損なわれた臓器を再生する治療や、創薬などへの応用が期待されている。山中教授は2006年にマウスの細胞から世界で初めて作製。翌年にはヒトの細胞でも成功した。(日本経済新聞)コメント;
久しぶりに、iPS細胞がらみでのコメントになる。
L-Mycの使用・・・いわれてみれば、なるほどだ。
マウスではあるが、長期フォローアップでの安全性検証の公開は非常に高く評価できる。
海外の研究機関は、なぜか、これを「やらない」から、余計に。
このようにマウスiPS細胞の安全性評価を、やり、公開すべきなのだ。(ここでも前から再三、言ってるように)。特に、トムソン4因子では、どうなるか知りたいのは私だけか?
一方、論文をみれば、C-Myc抜きの3因子によるiPSでも、長期フォローをすれば、40%くらいで癌死しているから、あの3年前のNature Biotechnology掲載の京大の論文の価値は、これでほとんど無くなってしまうが、仕方有るまい。「これが、研究だ」。
ただ、L-Mycを使えば、万事OKなのかについては、そんなに楽観的なコメントを書けない。
L-Mycでの「死亡率」は500日超で急激に増加しており(20%から50%くらいに)、しかも癌によるものではないようだ・・・。
やはり、レトロウイルスの使用そのものが問題なのかな。
いろいろ調べているみたいだけど、もう一度、死亡例の「肺」を、もっと、よ~く調べてみることだ。
(本当は癌死かもしれないよw)・・・ちょっと辛口コメントだけどね・・・。
総じて、 やはり、化学物質のみによる、ヒト正常細胞からのiPS細胞樹立と、その安全性評価に関する研究の公表が、今回の研究をより適切に評価する上でも、大いに役立つだろう。