ヒトES細胞の臨床試験・・・ヒトiPS細胞の臨床応用の「試金石」
【11月20日 AFP】米国の研究グループが19日、
米食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)に
ES細胞(胚性幹細胞)を使った臨床試験の認可申請を提出した。
認可が下りれば、ES細胞を用いた治療法が一歩、医療現場に近づく。
申請を行ったのは米バイオベンチャー、
アドバンスト・セル・テクノロジー(Advanced Cell Technology)の研究グループ。
黄班変性症の一種スタルガルト病で視力障害のある患者12人に対して、
ES細胞を用いた臨床試験を行うという内容だ。
スタルガルト病は光を受容する網膜色素上皮(RPE)細胞が失われたために
視力に障害が出たり失明する病気で、現時点では治療法が見つかっていない。
臨床試験では、スタルガルト病患者の眼球にES細胞由来の網膜細胞を注射して、
RPE細胞を補完するという。マウスで行った実験では、
この治療法が有効で副作用もないことが確認されているという。
研究グループのロバート・ランザ(Robert Lanza)氏は、
「長年におよんだ研究や政治的議論の末、われわれはついに、
ES細胞の潜在的な医療価値を示す寸前の所まで到達した」と臨床試験の意義を述べ、
「医療現場は臨床試験の大成功を心から待ち望んでいる」と話す。
FDAの認可が下りれば、来年初めにも臨床試験を開始する予定だ。
■ 待たれるES細胞の臨床試験
ES細胞を使った臨床試験の認可申請は、今回がまだ2例目だという。
バイオ企業ジェロン(Geron)のプレスリリースによると、
最初の申請は脊髄損傷に関する臨床試験だったが、FDAがこれを保留にしているため、
2010年第3四半期以前に臨床試験が行われる可能性はないという。
このほか、マサチューセッツ(Massachusetts)州の企業が、加齢性の黄斑変性症について、
同様の臨床試験の認可申請を行う予定だという。(c)AFP/Mira Oberman
コメント:
これらのヒトES細胞での臨床試験開発をFDA(米国食品医薬品局)はどのような基準をみたしていけば、前へ、前へと進めて、最終的に臨床での使用が承認されるのか?ポイントは、ここでも「癌化」の回避。上記のジェロン社の試験も、実質上、ここで止まっている。
ただ、アドバンスト・セル・テクノロジー社がやろうとする「黄班変性症の一種である「スタルガルト病」であれば、様々な理由で、そこそこ、うまくいきそうな気配。
ヒトiPS細胞の臨床応用(細胞移植など)は、この上記の動向次第といっても過言ではない。
むろん、その前に、癌化リスクを極限にまで減少させた高品質なヒトiPS細胞を樹立し、標準化する作業が必要。
そして、その高品質なヒトiPS細胞(各、個々の患者由来)から正常な各種の細胞へと、きちんと分化誘導させる。
ここまで、できれば、あとは、米国FDAの認める、ヒトES細胞での臨床試験開発プロセスに「便乗」することになろう。なお、この上記のヒトiPS細胞ならば、免疫拒絶も心配無い分、ヒトES細胞よりも臨床では、より理想的である。