iPS細胞・・・効率性と安全性の狭間
新型万能細胞「iPS細胞」の作製効率を、従来の1%以下から最大で約20%に高めることに成功したと、京都大の山中伸弥教授らが10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。作製効率は、実用化に向けた課題となっていた。
山中教授は「大幅な改善で意義は大きい。ただがんになりやすく、今後は安全性を高める必要がある」と話している。
山中教授らはがん増殖を抑えるp53という遺伝子に着目。この遺伝子を人工的になくしたマウスの皮膚細胞に、iPS作製に必要な4遺伝子を“運び屋”となるウイルスを使って入れると、iPS細胞になる効率が約20%に向上した。p53は、4遺伝子を入れる工程を不自然な刺激ととらえ、細胞を自殺や増殖停止に導くため、これまでは作製効率が悪かったと考えられるという。
安全性向上を狙ってウイルスを使わなかったり、導入する遺伝子を三つに減らしたりする方法でも効率は向上。ヒトの皮膚細胞でもp53を人工的に働かなくすると、同様の結果が出た。
iPS細胞とがん細胞は無限に増殖できるなど共通点が多く、関連が指摘されていた。今回はがんの増殖抑制という重要な機能を止めており、このままでは患者の治療や新薬研究には使えない。山中教授は「一時的にp53を働かなくするなど工夫が必要だ」と述べた。
また、これまで完全に分化を終えたリンパ球などからiPS細胞を作るのは難しかったが、山中教授らは今回の手法でマウスのTリンパ球からの作製に成功。将来、採血するだけでiPS細胞を作製できる可能性を示すものだとしている。(共同)
コメント:
ほかにも、いろいろ報道されている。
まっ、予告したように出たでしょ・・・論文が。
まあ、報道解禁まで時間あったから、内容は書かずにいたけれど・・・。
まあ、今回のは簡単に言うと「今までだったら作製効率は悪かったけど、(特に3因子での場合ですけど)90点くらいの質の高いiPS細胞はつくれた。でも、効率のみを重視すれば、50点未満のiPS細胞ができちゃう。
・・・そこで、「一時的にp53を働かなくするなどの工夫」を行えば、効率と安全性が、以前よりは両立するだろうなということ。要は、とりあえず、50点のiPS細胞クンを、夏合宿でしごきあげて、90点クンに成長させれば、いいわけ・・・。
進歩は進歩だけど、でも、それだけで本当にいいの?って、心配性の私は思うだけのことですが。
いろいろな評価が、書かれてるけれど、私は「がん細胞」を、更に深く理解するための「iPS細胞」に関する知見が出たねという感じです。