C-Myc無しで樹立されたiPS細胞を用いて作製されたキメラマウスでも、癌発生
今日は、慶応義塾大学で、iPS細胞のシンポジウムがあり、山中先生も出られるので、いってきました。毎日新聞後援だから、大きな記事が、また毎日新聞にバンバン載ると思います。
さて、今日の山中先生は、「C-Mycは善か悪か?」について興味あるデータを示されておられました。
Nature Biotechnology誌の論文掲載時では、C-Mycを除く3因子で樹立されたiPS細胞を用いて作製されたキメラマウスでは、26匹中、生後100日までに腫瘍の形成により死亡するマウスはいませんでした。
しかし、その後、フォローアップ期間を100週間にまで延ばすと、1~2匹が発癌したそうです。2年で3.8%~7.7%の発癌か・・・。まるで、肝硬変からの発癌(肝細胞癌)率なみの数字だな。これじゃあ、まだ、ちょっと・・・。
もっとも、C-Myc入りの4因子で樹立されたiPS細胞の場合では、この100週間で50%のキメラマウスが発癌(癌死を含む)したわけですから(論文発表時には20%)、C-Mycが発癌の原因というのは、全くそのとおりです。
なお、昨年秋に話題になって、年末に、このブログでも、問題点を紹介した、プラスミドによる4因子で樹立されたiPS細胞の場合は、レトロウイルスによる4因子のiPS細胞と発癌率は同じでした。
ただし、初期化にはC-Mycが有効で、「不完全な初期化」だと分化抵抗性による腫瘍ができるから、単純にMyc無しでいいかといえば、そうともいえず、この現象を防ぐためにC-Mycが必要になる。まあ、C-Mycを薬物で完全に代替可能ならいいけれど・・・。と、講演されてました。
C-MYc無しの3因子で樹立されたiPS細胞で、それが癌化するのか否かを予測できるマーカーでも見つけられればいいね。やりました、今、論文投稿中。
なお、ハーバードの「2因子+VPA」でのiPS細胞なら、将来どうなるか?
楽しみです。