前担当者の詐欺の時に同行していた営業が、このエリアの営業所長になった。

この人事は社内でも話題になった。

「今度の所長には気をつけてください」と営業とは別ルートから、客に注意喚起されるほどだった。

 

まあ、ダメな会社にはよくあることだ。

そう思っていたら、すぐに影響が出た。

 

その前に、ひとつ理解してほしいことがある。

私たち小規模農家は、低収入にもかかわらず、かなりの金額を農業機械に投入していることだ。

 

最近入手した農機販売会社のチラシから、農業機械の価格を紹介する。

この価格は、いま私が所有している農業機械に相当する新品の値段。

(主要な農機のみ)

チラシに表記してある価格なので、オプション等は含まない参考値となる。

 

コンバイン 3条刈り ーー 580万円

トラクター 33馬力 ーー 500万円

田植え機 4条植え ーー 180万円

乾燥機 ーー 120万円

もみすり機 ーー 70万円

計量選別機 ーー 24万円

もみ運搬機 ーー 30万円

合計 1504万円

 

他にも軽トラック100万円など、農業に必要な資材や設備を考慮すると膨大な金額になる。

よって農家は、専業・兼業に関わらず、農機代金の支払いで苦しんでいる。

 

おまけに、農業機械はすぐに壊れる。

維持費と修理費も高いので、農業収入は農業機械と修理代金に消えてしまうのだ。

 

農業でなくとも、設備投資や経費のかかる仕事は他にもたくさんある。

私が、ここで理解して欲しいこと。

それは、農機販売会社にとって、私たちは「客」だってこと。

 

農業機械メーカーが一部上場の企業に成長したのは、農家という客がいたからだ。

農機販売会社は顧客対応するのが仕事であり、そのコストを含めて農業機械の価格や修理代金が算出されている。

販売会社の社員が、客を騙して入手した現金を自分の財布に入れるなど、あってはならないことだ。

 

その連中が何の処分も受けず、所長になった。

さすが、一部上場会社の系列企業だ、というしかない。

 

ある日、農機会社から請求書が届いた。

コンバインの点検費用だったが、金額がおかしい。

 

5万円で依頼していた軽点検が、何の連絡もなく30万円になっていた。

 

いよいよ始まった。

客を客と思わない、金は奪うものだと考える、新しい所長が動き出したのだ。

 

(つづく)