1970年から楽器業界で仕事して40年。
私のように音楽を聴くのが好きだが楽器屋の息子でいながらヴァイオリンのレッスンも3回で脱走。全く何も演奏出来ない。
しかも体育会で大学の授業にもほとんど出席もせず、担当教授の顔すら覚えていない人間が、この世界に入り音楽大学を卒業された女性講師の方が眩しく感じ、ゆめゆめ音楽のことを語るな馬鹿にされるぞ思っていた東京での社会人1年目。

何ヶ月かして何か不可思議な事に遭遇しだした。
「先生、弾いてみていただけませんか?(当時は関東エリアで関西弁はご法度、苦労していた)」と言ってもほとんどの先生は弾いてくれない。
何気なく音楽家の事をたずねても、知らないようだった。
それでも日本では右肩上がりにピアノは売れ出していた。

40年後、当社の教室も演奏活動をされている講師陣が多くなってきた。その方達は新しくピアノが陳列されると「弾いてみていいですか?」と言って演奏する。
そういう方々以外は相変わらずそこにピアノがあっても触ろうとしない。

アマチュアのギター愛好家(音楽ジャンル問わず)は数本ギターを購入し奥方から怒られているのを知っている。
しかし、ピアノの先生が国産のメーカーのグランドピアノを数十年前に購入している物の買換えの話はほとんど無い。
国産メーカーだと性能的に20年くらいで限界が来ているはず。

ピアニストの先生方は生徒さんがピアノ購入のとき電子ピアノだけはやめて欲しいとかなり訴えている。
しかし、ピアノを弾かない先生は良いピアノのカテゴリーを自ら持っていない。電子を買っても無頓着。
数年待たずにその生徒達の大半は辞めていく。(統計上明らか)ピアノの存在が家庭に無く音楽的表現も出来ない電子ピアノに嫌気さすからだろう。

1970年代は右肩上がりの経済状況で、毎年10%以上のインフレが続き、ピアノブームの時で子供人口も増加している時代。
その時代から甘い指導体系でピアノや音楽を教えてきた付けが来たのだろう。
しかしその反面、最近は円高もあり海外に留学ししっかりと学んできた指導者も増えてきている。
さらに、私が40年間でこれほどクオリティの高さに対し価格の安いピアノに初めてめぐり逢えた。
その方々ともう一度、音楽の指導と楽器についてトライしていきたい。