名器と言われる楽器が存在する。
ヴァイオリンのストラディヴァリやガルネリなどその典型。300年近く前の楽器です。
「豊治、この楽器を預かって」とアメリカから来られたヴァイオリンの先生から緊張した。なにしろストラディヴァリ、いったい何億円するのか分からない。

ヴァイオリンもだが、名器が出来た時代のピアノもある。
私がある高名なピアニストで日本の音楽界でも重鎮でいらっしゃる先生からご招待を受けてお伺いしたとき「庵原さん、このピアノ見てよ」と言われて拝見したピアノ。スタインウエイのDとB、それと昔の会社のべヒシュタインのフルコンサートと210Cmクラスの4台。
とんでもなく素晴らしかった。

今では出来ないこのピアノ。
当時のホロビッツやアラウなどの巨匠が若く、技術者達に色々とアドヴァイスもした頃のピアノ。
何か職人達の心意気も感じる素晴らしい音。
楽器屋として幸せを感じた。

最高のヴァイオリンやピアノの音とめぐり逢いがあった事に感謝したい。
それと、録音されたものだが、今は亡き巨匠達の名演奏に接する事もこの職業をしているからには当たり前だと思うが、なかなか音楽談義の出来る場面も少ない。

しかし、そういう楽器の存在、そして、そういう音楽家達の存在も知り、聞いて欲しい。
聴きながら知らず知らず涙が溢れる演奏もあることを。