少年兵が隠れられる程度にはなった我が家の庭で朝から〈草刈正雄〉な時を過ごしたのであったが、除草剤を撒いた直後に雨など降ってきよってからにどこか not satisfied な午後になったそんな折に聴くこの1枚。
新宿DUGでの弾き語りだよ。貴重だよね~
こんなんよく録った、中平さん!流石っす。
あらためて聴くと、大傑作だね、これ。
沁みる。
マジで沁みる。
除草剤が草に染みるよりも、沁みる。
エラもサラもピアノは弾くだろうし、サラ・ヴォーンなんてかなり上手だというけれど、いやいやどうしてカーメン・マクレーのピアノこそ、これはマジでヤバいっしょ。
あの歌声に、このピアノだもん、悪いわけないよね。
A面3曲目の「I Can't Escape From You」は、彼女の最高傑作(と私は思っている)『After Glow』の中でも取り上げられている名曲だけれど、これがまた荒川よしよしでさあ。
この弾き語りも『After Glow』バージョンにまったく劣らないな。
エラやサラのことを何か名前聞いたことある~って人は多いんだけれど、なぜかカーメンは知らんって言うんだよね。
カーメン聴かないって、たぶん人生少しだけ損してますよ。
ところで聴いていてふと思ったのは、「I Can't Escape From You」ってもちろん恋歌なのだろうけれど、この「You」はいろいろなものに置換できるような気がしてきて例えば最近セミリタイアして思うのは結局なかなか真のフリーにはなり切れないんだなあってことでたぶんそれはフルリタイアしたとしてもおそらくはきっと「I Can't Escape From You」なのではないだろうか…ということ。
この「You」とは哲学的に言えば〈構造〉ということなのかしら。
〈実存〉は〈構造〉に先立つと、かのサルトルはのたまったが、そんなに簡単にいかんのじゃないか、サルトルさんよ~
ピアノの鍵盤の上に猫を歩かせたとしてそれはフリー・ジャズたり得るか、いやたり得ない。なぜならばピアノの構造はもちろん、猫の体の構造上にだってそこには当然シバリがあるわけで真のフリーたり得ないのだ…と言ったのは確か山下洋輔さんだったかしら。
実存と構造との間で葛藤する日々…、
レコードは回り続けるのであった。